建設経済の動向

建設経済の動向
2017年9月号 No.491

担い手確保へ今後10年の政策を集成

国土交通省が設置した建設産業政策会議は7月4日、「建設産業政策2017+10」と題する報告書を発表した。将来の担い手確保に向け、働き方改革や生産性向上に関する政策を取りまとめたものだ。単に理念を示したのではなく、経営事項審査の改正や適切な工期設定のためのガイドラインの策定など、建設業にとって身近な内容が多く盛り込まれている。

国土交通省は昨年10月、「建設産業政策会議」(座長:石原邦夫・東京海上日動火災保険相談役)を設置。建設産業の将来展望や建設業関連制度の基本的な枠組みについて、7回にわたる会合で検討してきた。そして今年7月、同会議は「建設産業政策2017+10 ~若い人たちに明日の建設産業を語ろう~」(以下2017+10)と題する報告書を取りまとめた。人口減少下での担い手確保を最大の課題と位置付け、今後の10年間に向けた政策を集成したものだ。

この10年で緊急性が高まった
将来の担い手不足への懸念が背景に

「2017+10」は、国土交通省が2007年に発表した「建設産業政策2007」の後継版の位置付け。同政策でも将来の担い手不足への懸念に言及していたが、それから10年を経て、より緊急性を要する課題となった。これが2017+10の取りまとめに至った背景だ。
政策の代表的な内容は下図の通りだ。「働き方改革」、「生産性の向上」、「地域力の強化」、「良質な建設サービスの提供」といったテーマについて、制度の改正などを含む取り組みの方向性を示した。個々の企業や業界内部だけの努力では限界があることから、業界外の協力も得ながら進める政策も数多く盛り込んでいる。

図 「建設産業政策2017+10」の主な項目

こうした「○年後を見据えて」といったタイプの報告書の場合、理念的な提言が中心となりがちだが、「2017+10」はかなり具体的な内容に踏み込んでいる。建設業にとって身近な法制度の改正などが、矢継ぎ早に行われるのが特徴だ。

社会保険未加入で経審を減点
適切な工期設定のためのガイドラインも

手始めとして、建設会社の経営事項審査(経審)を改正する。改正の第1弾として、7月25日に開催された中央建設業審議会総会で示された主なポイントは、以下の3点だ。
①W点のボトムの撤廃
制度上、現行のW点は合計値がマイナスとなった場合、0点として扱われてマイナスにはならないが、その「ボトム」を撤廃してマイナス値を認める。これによって、社会保険未加入企業や法律違反などに対する減点措置が厳格化される。
②防災活動への貢献の状況の加点幅の拡大
防災協定を締結している場合の加点を、現行の15点から20点へと拡大する。
③建設機械の保有状況の加点方法の見直し
建設機械を保有している場合、現行は1台につき加点1(最大15点)だが、1台目を加点5とする。最大値の15点は変わらないが、少ない台数でも建設機械を保有している企業はより高く評価される。
そのほか、働き方改革の一環として、適切な工期設定のためのガイドラインも策定する。安倍内閣が設置した「建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」に検討の場を移し、取りまとめを行う。

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