建設経済の動向

建設経済の動向
2017年7・8月号 No.490

全国で公共投資の減少傾向続く

多くの自治体が税収減を見込むなか、都道府県の2017年度予算では、一般会計の歳出が総額で前年度比2.5%減となった。公共工事などの投資的経費の落ち込みはさらに大きく、同4.3%減。微減だった前年度に続き2年連続の減少だ。それでも多くの自治体は、昨年4月の熊本地震などを受けて、防災への取り組みに引き続き力を入れている。

47都道府県における2017年度の一般会計の歳出は総額で52兆1,821億円。このうち、知事選を予定していたために骨格予算を組んだ秋田県と千葉県を除く45都道府県の歳出総額は49兆9,888億円で、前年度と比べて2.5%の減少となった。背景には、都道府県税の減収、地方交付税と臨時財政対策債の減額などで強いられる厳しい台所事情があるようだ。
東日本大震災の被災地の歳出を見ると、宮城県が10.9%減、福島県が8.7%減、岩手県が8.1%減と、いずれも大きく減少した。復旧・復興事業が進み、震災に関する歳出が縮小したことが要因だ。

「10%以上減」の都道府県が前年度に比べて倍増

インフラの整備などに充てる投資的経費も全体的に抑制傾向にある。前年度と比較可能な45都道府県の合計は、4.3%減少して7兆3,074億円となった。
都道府県別に見ると、減少した自治体数は33に上り、2016年度の26を大きく上回った。さらに、10%以上減少した自治体数が昨年度に比べて倍増となる10(全体の22%)と、減額幅が大きい自治体の多さも目を引く。右図の通り、2015年度予算では投資的経費を前年度より増やした自治体が半数を超えていた。しかし、2016年度には減らした自治体の方が多くなり、2017年度は減少傾向に拍車がかかった。
例外的に投資的経費を大幅に伸ばしたのが熊本県だ。昨年4月に発生した熊本地震からの復旧・復興を図るために必要な費用を積み上げた。
同県は、県政史上最大となる当初予算額8,857億円(前年度比16.3%増)を計上。そのうち1,855億円(同38.4%増)を投資的経費に振り分け、復旧・復興事業を加速する。代表的な事業の1つである「街路事業(県道熊本高森線の整備)」は、熊本地震で甚大な被害を受けた益城町を走る県道熊本高森線を4車線に拡幅し、熊本市の東側の地域を再興する取り組みで、2017年度は20億6,700万円を充てる。

熊本地震の教訓生かし各地で防災・減災事業が盛んに

活断層の脅威を認識させた熊本地震を受けて、これまでの地震対策を見直すなどの動きも出てきた。例えば岐阜県は、熊本地震を踏まえた「内陸直下型地震の震度分布解析事業」を実施し、これまでの被害想定を見直す。新たな震度分布図と液状化判定図の作成に、820万円を計上した。
東京都は、景観の改善に加え、災害時の被害拡大防止を狙い、無電柱化を加速する。2020年の東京五輪開催も視野に入れ、2014年度から5カ年計画で第7期の「東京都無電柱化推進計画」(整備計画延長は916km)を実施しており、2019年度までに完了させる。今年度の予算額は約251億円に上る。
そのほか、奈良県が「大和川流域総合治水対策推進事業」に約28億円、埼玉県が「激甚化する水害への対応」に約11億円をそれぞれ計上するなど、水害対策に力を入れる自治体も多い。

図 都道府県の投資的経費の対前年度増減率分布

当初予算の投資的経費について対前年度増減率の大きさで分類し、それぞれの都道府県数の割合を示した。数値は都道府県数。2015年度は北海道、神奈川、福井、山梨、三重、奈良、鳥取、徳島、福岡、佐賀、大分、宮崎の12道県、2016年度は熊本の1県、2017年度は秋田と千葉の2県がそれぞれ骨格予算だったので除いた。投資的経費とは社会資本整備などに充てる経費で、普通建設事業費と災害復旧事業費、失業対策事業費に分けられる。
(資料:日本経済新聞社「日経グローカル」)

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