経済動向

経済動向
2020年6月号 No.519

建設経済の動向 なぜ新卒の社員が辞めてしまうのか

超売り手市場の影響を受け、建設業では深刻な人手不足が続いてきた。その結果、新卒の社員が採用できないだけでなく、首尾良く採用できたとしてもなかなか定着してもらえないという課題を抱える建設会社は少なくない。日経コンストラクションの独自調査などでその背景を探った。

建設業では、深刻な人手不足が続いている。リクルートワークス研究所が2019年4月に発表した建設業の大卒求人倍率は6.21倍に達していた。日経コンストラクションが土木一式の完成工事高30億円以上の主要建設会社などを対象に、19年4月入社の新卒採用の状況を調査したところ、回答を寄せた160社の46%が、採用者数が「予定数に満たなかった」と答えた。

さらに、東京都中小建設業協会が会員企業に18年度の採用状況を尋ねたところ、「0人」と答えていた会社が53%に達していた。こうした数字からも、若手の採用が難しくなっている実情がうかがえる。

強烈な売り手市場の影響を受け、せっかく採用してもすぐに辞めてしまう若手は多い。その背景を探るために、日経コンストラクションでは20年1月、主に建設業界に勤める若手を対象とした独自のアンケート調査を実施した。

その結果、仕事内容や働き方に対して抱く就職前のイメージとのギャップが、「かなりある」「ある」「少しある」と訴える回答が7割超に達した。仕事の内容や働き方に対するイメージギャップが、若手の失望につながっている実態が浮かび上がってくる。

重視するのは仕事のやりがい
インターン制度の存在感も

では、そもそも若手はどのような視点で就職先を決めるのか。就職先を決めた理由についてもアンケートで確認した。就職先を決めた理由を選択肢から選んでもらうと、「仕事内容にやりがいがある」が最も多く、7割弱を占めた。これに「社員の人柄や社風が良い」「知名度・ブランド力が高い」「給料が高い」が続いた。特に、「仕事内容にやりがいがある」という選択肢は、就職を決めた最も大きな理由としても、4割超の回答を集めていた。

仕事内容への思い入れが強い分、そのイメージとのギャップが大きければ、悩みは増す。売り手市場にある環境下では、新卒の社員は会社に早々と見切りをつけてしまう。

では、就職活動をする若手は、どのようにして就職に必要な情報を得ているのか。アンケート結果を見ると「企業単独の説明会、現場見学会」「OB、OG訪問」が5割弱で拮抗していた。最近増えている「インターンシップへの参加」も4割を超えており、学生としては、企業ときちんと接触したうえで情報を収集している状況が見て取れる。それでも、ミスマッチが多かったり、イメージギャップが大きかったりするということは、企業側が学生に伝えている情報にも問題がある可能性が高い。

ここまで示してきたアンケート結果などを見ていくと、就職前の学生に仕事の内容や働き方について正確に伝えていくことが非常に重要だと分かる。若手を引き入れたいという思いばかりが先走り、実際とは異なる良い部分だけをアピールをしても、入社後に定着してくれる確率は低いという現実は認識しておきたい。

 

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