日本経済の動向

日本経済の動向
2019年7・8月号 No.510

新しいビジネスモデルへの取り組み 地域銀行の「地域商社化」

東京一極集中が続く中、地方創生の観点から、地域の活性化に企業の発想を活用する「地域商社」の役割が重視されている。一方、金融機関は超低金利下で既存の商業銀行モデルによる収益確保が厳しくなっており、地域銀行の新たなビジネスモデルの一つとして、「地域商社化」が考えられる。そこで今回は、地域活性化における地域銀行の関わりなどについて解説する。

「地産外商」で地域活性化

政府は重要政策課題の一つとして地方創生を掲げ、人口急減・超高齢化というわが国が直面する大きな課題に対し、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生することを目指している。そして、「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」「地域未来投資促進法」では、「地域商社」が重要な取り組みになっており、2020年までに100社の設立が目標化されている。

地方では、公共投資や工場誘致といった外からの経済活性化策が限界にきており、今日必要なのは、地域資源を活用した産業を自ら起こし、商品やサービスを域外に販売してもうける「地産外商」である。地域商社の活動は、それを支えるものである(図)

地域銀行が地域商社機能を担う

この地域商社に、地域銀行が関連する事例は複数あり(表)、今日、各地域銀行が実業分野に取り組む姿が示されている。企業の稼ぐ当期純利益は、今やバブル期を大きく上回る水準にあり、キャッシュフローを生み出す「川上」には潤沢な資金が溢れているが、収益還元上、貸し手(銀行など)に支払利息として向く金額は限界的だ(図2)

貸出に多くを依存した商業銀行のビジネスモデルは機能しにくく、なかでも、国内での貸出を中心とした預貸業務への依存度合いが高い地域銀行は、苦境に陥りやすくなる。そこで、投資の目利き力を発揮し、有望な事業運営の川上に切り込んで、キャッシュフローの源泉をつかむ、商社的な対応の実現が問われている。その具体例が地域銀行の「地域商社化」といえよう。地域企業の収益が増加しても、その恩恵が地域銀行に向かわないなか、地域銀行が地域の産業と一体になる地域商社を設立して、実業の収益を確保するビジネスモデルである。

なお、地域銀行が地域商社を設立する場合、銀行に課されている出資規制の緩和も重要な課題である。また、昨今では、銀行もスタートアップ段階への融資も含めた対応を行って、将来性のある企業の発掘を担う動きが生じている点も、注目される。

 

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