建設経済の動向

建設経済の動向
2018年12・2019年1月号 No.504

建設業は初年度に最大6000人

2018年12月8日、国会で「改正出入国管理法」が成立した。これまでの「技能実習制度」では外国人労働者が単純労働に就くことはできなかったが、改正入管法では新たな在留資格を新設。深刻な人手不足の解消に向けて、単純労働も可能な外国人労働者の受け入れ拡大に舵を切った格好だ。

政府・与党が秋の臨時国会で最重要法案と位置付けた「改正出入国管理法」が、12月8日に成立した。2019年4月1日に施行する。
これに先立つ2018年11月14日、政府は業種別の外国人受け入れ人数の見通しを発表した。対象となるのは建設業のほか、農業、ビルクリーニング、飲食料品製造業など14業種。建設業の受け入れ人数は初年度に5000~6000人、5年間で3万~4万人と見込む。初年度の最大受け入れ人数では、建設業が4番目に多い。
政府は受け入れ予定人数の最終値を、改正案の成立後に法務省がまとめる分野別運用方針の中で示す考えだ。建設業では、とびや型枠、鉄筋、左官といった職種別に運用方針を策定するとみられる。
想定する受け入れ人数は国土交通省の試算に基づく。同省は技能者の高齢化などに伴い、建設業では5年後に21万人分の労働力が不足すると算定。高齢者や女性の就業促進や生産性向上といった対策を進めても3万~4万人足りないと見込む。その分の労働力を外国人材で補う考えだ。

技能実習生の約4割が新資格に移行
報酬は日本人労働者と同等以上に

改正入管法では、「特定技能1号」と「同2号」という、外国人労働者の新たな在留資格を創設する(下図)。1号は、「相当程度の知識または経験を要する技能」や一定の日本語能力が取得要件。在留期間は最長5年で、家族の帯同は認めない。1号で滞在中に指定の試験に合格するか、熟練した技能が認められれば2号に移行し、在留期限の更新や家族の帯同が可能になる。
1号の在留資格は技能、知識ともに技能検定3級程度の取得に必要な水準とし、国土交通省が指定する試験に合格した外国人に付与する。
ただし、現行の技能実習制度で実習を修了した外国人については、試験を受けずに無条件で1号に移行可能。政府は建設業の技能実習生の約4割が新資格に移行すると推定している。
「国際貢献」に位置付けられる技能実習制度は、外国人が受け入れ先の企業で3~5年間働いて特定の技能を習得し、母国の経済発展に役立ててもらうことが狙いだ。そのため、技能実習生を単純労働に従事させることを禁じている。これに対して新たな在留資格は、外国人を単純労働にも従事できる労働者と見なす。在留資格を持つ分野の中で転職を認めるほか、外国人労働者を受け入れる機関に対して、日本人労働者と同等以上の報酬を支払うことなどを義務付ける。
建設業は15年に、20年度末までの時限措置として「特定活動」と呼ぶ在留資格の対象となった。東京五輪前後の建設需要に対応するため、技能実習を終えた外国人に、追加で最大3年の就労を認めるものだ。1号の資格が新設されれば、技能実習と特定活動を組み合わせて最長13年の就労が可能になる。

図 建設業に就業する外国人が取得できる在留資格

 

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