建設経済の動向

建設経済の動向
2018年7・8月号 No.500

「技士補」活用し監理技術者の兼務も

国土交通省は、1人の監理技術者が複数の工事現場を兼務することを認める「現場技術者配置要件の合理化」の検討を始めた。中小の建設会社で監理技術者になれる有資格者の数が限られていることや、今後さらに技術者不足が進むと懸念されていることが背景にある。兼務を認めるに当たっては、導入が検討されている「1級技士補(仮称)」を活用する考えだ。

中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会の基本問題小委員会は、「現場技術者配置要件の合理化」についての検討を開始。今年5月28日に開催した会合で、1人の技術者が複数の工事現場の監理技術者を兼務することを認める案を示した。
土木の場合、下請け契約の総額が4000万円以上の工事など、一定額以上の建設工事の施工者は、土木や建築で1級の施工管理技士などの資格を持つ監理技術者を専任で配置しなければならない。監理技術者が不要な工事でも多くの場合、2級以上の施工管理技士などの資格を持つ専任の主任技術者を配置する必要がある。
主任技術者については2014年2月から、造るものに一体性や連続性があるか主要な下請け施工者に同じ会社を起用していて、現場が約10km以内に近接した2件程度の工事を対象に兼務を認めている。監理技術者についても同様に、対象工事を絞り込んだうえで兼務を認める考えを示したわけだ。
近年、ICT(情報通信技術)などを活用した施工管理の効率化が進んでいることから、一定の条件の下に兼務は可能だと判断した。

監理技術者を補佐する役職を新設
2級に合格した「1級技士補」を対象に

提示された案によれば、兼務を認めるのは①難度が低いなど工程や品質の管理が容易な工事、②各工事に「監理技術者補佐(仮称)」を専任配置した工事――の2つのケースだ。このうち、②の「補佐」には、国土交通省が導入を検討している「1級技士補(仮称)」の資格者を充てる方針を示している。
国土交通省は土木などの施工管理技士について、1級の学科試験に合格したが実地試験には不合格だった受験者に「1級技士補」の資格を与える制度の創設を検討している。例えば、2015年度に実施した土木施工管理技士試験に当てはめると、約1万2500人が「1級技士補」の対象となる(下図)

図 「技士補(仮称)」の概要

ただし、2級技士を取得した後に1級技士補になった人と、2級技士を持たずに1級技士補になった人とでは位置付けが異なる。
1級の学科試験合格者は「専門技術、施工管理、法令等に関する『一般的な知識』を有する」とされ、2級の合格者は「現場実務に関する『一応の応用能力』を有する」とされている。2級を持っていない1級技士補は後者の資質が担保されておらず、現場実務の知識が少ないことも考えられる。そこで、上記②の「監理技術者補佐」には、2級技士を保有している1級技士補以上の技術者を配置できるようにする考えだ。
なお、監理技術者に関する規制緩和の実現には、建設業法施行令や場合によっては同法自体の改正が必要になる。現時点でその時期は決まっていない。

 

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