建設経済の動向

建設経済の動向
2017年4月号 No.487

5年連続で大幅上昇、前倒し適用も継続

建設業で働く人の賃金を決める基になる公共工事設計労務単価。2017年は前年に比べて平均で3.4%引き上げられ、5年続けての大幅な上昇となった。年度初めを待たずに単価を改定する「適用時期の前倒し」も4年連続だ。ただし、地域や職種によって上昇率には差があり、前年から減少した例も見られた。

国土交通省と農林水産省が、“右肩下がり”だった公共工事設計労務単価を大幅に引き上げたのは2013年のこと。社会保険未加入企業の加入促進を図るために、法定福利費相当額を設計労務単価に含めるように変更したことが大きな要因だ。建設業の将来の担い手確保に向けて、働く人の待遇改善を意図した措置だ。
設計労務単価の引き上げはその後も続き、2017年は前年に比べて3.4%増え、平均で1万8,078円となった(金額は全国・全職種の加重平均、増加率は全国・全職種の単純平均)。大幅引き上げ直前の2012年に比べると、5年間で39.3%も増加した計算になる。
設計労務単価は1999年から2000年にかけて大きく落ち込んで以降、下落傾向が続いていたが、ようやく1999年の97%の水準まで回復した(下図)

図 公共工事設計労務単価の平均の推移

地方により異なる増加率
都市部を中心に下落した職種も

設計労務単価は年度初めの4月に改定されるのが一般的だが、市場の実勢価格を迅速に反映する目的で、2014年以降は前倒しで改定されてきた。2017年もそれを踏襲し、新しい単価は3月1日以降に契約する工事から適用されている。それまでに契約済みの工事でも、着工前であれば新単価を用いて契約変更する。
このように、全体的には上昇基調にある設計労務単価だが、細かく見ていくと、職種や地域によって“濃淡”があるようだ。
まずは職種による差だ。主要12工種(特殊・普通・軽作業員、とび工、鉄筋工、運転手(特殊・一般)、型枠工、大工、左官工、交通誘導員(A・B))を見ると、全都道府県の単純平均は前年比2.2%増(一部の都道府県で単価が示されていない大工を除く)。そのうち上昇率が大きかったのは交通誘導員Aの3.8%、同Bの3.6%、左官工の3.4%など。一方、特殊・普通・軽作業員は0.7~0.8増と、上昇率が小さかった。
地方別では北海道や東北、北陸などで上昇率が大きかったものの、関東や近畿などの都市部では小さく、昨年より減少した職種もあった。例えば関東地方では、作業員(特殊・普通・軽)や運転手(特殊・一般)の単価が、前年比で0.4~0.8%、それぞれ減少した。

東北の被災3県は引き上げ継続
熊本ではモニタリング実施

東日本大震災の被災地である岩手、宮城、福島の3県では、2012年以降、設計労務単価の引き上げ措置が実施され、2017年も継続される。その影響で被災3県での伸び率は他の地方に比べて大きく、2017年の設計労務単価は2012年に比べて55.3%も増えた。
しかし、2016年と2017年を比較すると、前述の通り全国平均の伸び率が3.4%だったのに対し、被災3県は3.3%増にとどまる。被災3県の伸び率が全国平均を下回ったのは、この措置が取られて以来、初めてのことだ。被災地の人手不足が、ひと頃に比べて落ち着いてきたとみることもできる。
他方、2016年4月に発生した熊本地震について、現時点では特別な措置は取られていない。ただし、一部の労務単価に上昇の兆候があることから、国土交通省は公共事業労務費調査とは別に労務費モニタリング調査を実施することを表明している。

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