日本経済の動向

日本経済の動向
2023年3月号 No.546

大幅に拡充される少額投資非課税制度(NISA)

「資産所得倍増プラン」の重要施策の一つとして、2024年以降、少額投資非課税制度(NISA)が恒久化され、大幅に拡充される。この新しいNISAにより、貯蓄から投資への動きの本格化が期待されるが、「成長と資産所得の好循環」の実現には課題もある。そこで今回は、NISAの制度改正のポイントや、その利用拡大における課題などについて解説する。

「資産所得倍増プラン」における目標

2022年11月28日に、政府の新しい資本主義実現会議において、「資産所得倍増プラン」が正式に決定された。このプランでは、5年間でNISAの総口座数を1,700万から3,400万に、また、NISAからの投資額を28兆円から56兆円に、それぞれ倍増させる目標が掲げられている。そのうえで、長期的な目標として、資産運用収入そのものの倍増も見据えて政策対応を図るとしている。

このNISAからの投資額の増加により、貯蓄から投資への動きが本格化する可能性は高い。資産所得倍増プランでは、潤沢な個人金融資産、特に、預貯金が企業の成長投資の原資となり、日本企業の成長が促進され、企業価値が向上するとしている。

同時に、企業価値が拡大すれば、配当金の増加や株価の上昇を通じて、家計の金融資産から得られる所得は更に拡大し、「成長と資産所得の好循環」が実現すると期待している。

2024年以降の新しいNISAの概要

NISAは、株式や投資信託などへの投資から得られる配当金や分配金、売却益が、一定期間非課税となる少額投資制度である。しかしながら、これまでのNISAは、やや複雑な制度であったといえる。例えば、2014年に時限措置として開始された「一般NISA」、2018年に同じく時限措置として導入された「つみたてNISA」などがあり、年単位で「一般NISA」と「つみたてNISA」のどちらか一方を選択する必要がある。また、「一般NISA」は、株式や投資信託などに非課税で投資できる金額が年間120万円、保有できる期間が5年であり、一方、「つみたてNISA」の場合は、年間投資枠は40万円、非課税保有期間が20年と異なっている。

このような状況に対し、資産所得倍増プランを受けて、2022年12月23日に閣議決定された2023年度税制改正大綱において、2024年以降のNISAの恒久化・抜本的拡充の方針が示された。

すなわち、新しいNISAは、時限措置であった制度が恒久化されたうえで、「つみたて投資枠」および「成長投資枠」と呼ばれる2つの投資枠が併用可能になる。また、非課税保有期間が無期限化され、2つの投資枠合算で年間最大360万円、総枠での非課税保有限度額が1,800万円と、大幅に拡充される。

「成長と資産所得の好循環」につながるか

2022年9月時点で、個人金融資産は2,000兆円を超える。そのうち、現預金は約1,100兆円となっている。2024年よりNISAが大幅に拡充され、株式や投資信託などへの投資に対するインセンティブが強化されることで、貯蓄から投資への動きが本格化する可能性は高い。

一方で、新しいNISAによって貯蓄から投資への動きが本格化したとしても、資産所得倍増プランにおいて期待される「成長と資産所得の好循環」の実現には大きな課題がある。

それは現状、投資先として、日本企業ではなく、海外金融資産が選好されていることである。報道によれば、2022年1~11月の投資信託市場では、海外株投信に4.3兆円が流入する一方で、日本株投信への流入額は0.6兆円にとどまっている。

日本企業が新しいNISAからの投資の受け皿となるには、日本株および日本株投信への投資が報われる環境が必要だ。そのためには、まず、日本企業の業績向上、株価上昇が必要条件となる。

 

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