日本経済の動向

日本経済の動向
2017年12・2018年1月号 No.494

中国経済見通しのポイント

2017年10月の中国共産党の第19回党大会、一中全会で習総書記の続投が決まった。習総書記の名を冠した思想も党規約に入り、習総書記が強いリーダーシップを発揮していくことが党大会で確認された。今回は、この党大会で示された方針などを踏まえて、世界経済に大きな影響を与える、今後の中国経済の見通しのポイントなどについて解説する。

世界経済をけん引する中国

習総書記は党大会で「新時代」に入ったことを宣言し、21世紀中葉に向けて経済を中心に「強国」化を図る方針と自信を示している。中国のGDP(国内総生産)の規模は米国に次ぐ世界第2位となり、近年では中国企業の対外進出や人民元の国際化、アジアインフラ投資銀行の設立主導、「一帯一路」の推進など、中国から国際経済・社会に向けた働きかけも積極化しつつある。
また、2016年を底にした世界経済の回復は、李克強指数に示されるように、中国経済の改善にけん引された面が大きく、17年には同指数のピークアウトが指摘されたが、結果として高原状態が続いており(図1)、中国経済は底堅く推移している。

図1  李克強指数推移

痛みを伴う改革で中国経済が減速するリスク

ただし、政権基盤がより強固になったことで、習総書記が痛みを伴う改革をより前に進めることに伴う減速リスクに留意が必要である。
中国の実質投資の推移をみると(図2)、中国政府が既に2017年初から投機抑制、デレバレッジ、過剰生産能力の調整を行っていることがわかる。過剰生産能力業種を抱える製造業の投資が低下したほか、不動産開発投資が減少に転じている。投資抑制策を受けて住宅需要も減速した。

図2  中国の実質投資推移

一中全会後の習総書記の記者会見で示された、今後の中国の政治・経済の節目を整理すると、()の通りとなる。中国にとって2018年は、1978年から始まった「改革開放」路線採択40周年であり、改革の着実な進展を示す必要がある。その結果、過剰生産能力やデレバレッジなど、痛みを伴う改革のペースが一層早まることが想定される。また、2021年は中国共産党成立100周年、2022年は第20回党大会の開催年であり、こうした節目を早くから展望し、安定の確保が重視されやすい。

表  一中全会後の習総書記の記者会見で示された今後の節目


以上を勘案すると2018年に向け、GDP倍増目標の達成が見込まれる成長は維持しつつも、早期に痛みを伴う改革を進めることで、中国経済は減速に向かうと展望される。2018年に向けたリスク要因の一つは中国の減速リスクだろう。

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