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2021年10月 No.532

台風被害の名残を課題研究で一掃!身近なことをきっかけに都市計画を意識する

今年、創立60周年を迎える神奈川県立向の岡工業高等学校。「ものづくり」は「人づくり」をキーワードにマイスター育成を目指しています。多摩川のほど近くに位置する同校ではグラウンドが遊水地のような役割を担っていることもあり、台風19号により被害が発生。この経験を課題研究に取り入れ「校内修繕」に取り組むのは、建設科の前場秀夫先生。この活動から生徒に伝えたいことを伺いました。

校内修繕に取り組むことが地域への奉仕活動に

「身近なことから都市計画について考えるきっかけになれば」と、前場先生が取り組んでいるのが課題研究の校内修繕だ。校内修繕班は毎年、敷地内の破損個所や清掃が必要な場所を探し、改善していく活動を行っている。今年、生徒たちが重点的に取り組むことにしたのは、グラウンド回りの側溝に溜まった泥出し。これは昨年の台風19号で受けた被害の名残なのだ。

「当校のグラウンドは、多摩川氾濫時には遊水地のような役割も担う場所です。台風19号の強い雨で溢れた多摩川の水がグラウンドに流れ込み、2m近く溜まりました。その時に溜まった泥が側溝に残っていたんですね。校内の側道は地域の側道ともつながっているので、当校敷地内が詰まっていては水の流れは生まれません。この課題を改善することが、ひいては周辺地域の安心安全につながるわけです。生徒たちは他の先生の話なども参考にしながら、自分たちで『側溝の清掃をする必要がある』と気づき、自分たちの意思で取り組むことを決めました」

8名のメンバーで、泥を掻いては手押し車に載せ捨てに行くという作業をがむしゃらに行い、1学期中に完了したのは全体の5分の1ほど。ではあるが、前場先生は地道な作業の中に、生徒たちの成長を感じる瞬間が多くあるという。

「自分たちでよく考えて取り組んでいます。私は最初に道具の指示や説明はしますが、細かな作業指示は出しません。例えば側溝のふたを開ける道具としてはスコップを指示していたのですが、作業を進める中でスコップ自体が傷むことに気づくんですね。そうすると、『単管パイプを使ったら、てこの原理でもっと楽にできるんじゃない?』と相談してきます。自分たちなりに、効率を考えて取り組む姿勢がいいですよね」

作業の取り掛かりの場所も、生徒たちの自主性に任せた。本来であれば、水の入り口から作業をするのが適切なのだろうが、生徒たちは部活動などでよく使う馴染みの深い場所からスタートさせた。

「効率を考えると適切ではないかもしれません。しかし、何事にもチャレンジすることから始めてほしいと思い、間違っていても失敗しても自分たちで考えて自由にやらせたいと考えています。まずはやってみて、最終的に『都市計画の視点で考えると、実はこういう順番で作業を進めた方が良かったね』と、理解ができるようにしたいですね」

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