FOCUS

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2019年11月号 No.513

実際の現場さながらの学校林実習 「自主性」を育む環境づくりへのこだわり

北海道の北東部、自然豊かな北見の地で、オホーツク管内唯一の工業高校として地域の期待を担う北海道北見工業高等学校。昭和39年の設立以来、約8,000名の卒業生を輩出しています。「地域に開かれた教育」を目指し、生徒が主体となって取り組むボランティア活動を積極的に推進。地域の方々と触れ合いながら、どのように生徒の自主性を育んでいるのか。同校卒業生でもある建設科、洞防人先生にその指導内容を伺いました。

建設業界で働くのに重要な「つながり」づくり

工業高校では珍しく、実習を行うために山の一部(以下、学校林)を所有する同校。土地を寄贈された当初は測量などの実習を行い、OBたちにとって思い出深い場所でした。しかし、洞先生が在学中の頃から学校林の活用がなくなり、長い間手つかず状態。実習もできないほどに荒れ果てていたところ、3年前の台風で斜面が崩壊。その修復をきっかけに整備を開始し、学校林での実習が復活しました。

校訓である「自主友愛」の精神を育むとともに、生徒たちが「努力と挑戦」を常に実践できる環境を整える北海道北見工業高等学校。地域に開かれた学校として、その存在感を発揮している

■ ■ 学校林を復活させようと思ったのはなぜですか?

建設業界できっと役に立つ「縦のつながり」が、学校林をきっかけにできたらいいなと思い、復活させました。建設業で活躍されている本校OBとお話すると、学校林を活用できていないことにがっかりされる方が多い。先輩方の想いを受け学校林を何とか生かせないか考えました。そこで思い至ったのが、「つながり」です。我々教員が1つの学校に長く留り、OBと在学生をつなぐパイプになることはできません。しかし学校林を代々引き継いでいくことができれば、「学校林での思い出」をきっかけに同窓生同士でつながっていけるのではないかと思ったんです。今まで縦のつながりといえば部活動くらいでした。そこに、学校林を継承しながら強く結んだ学科のつながりを加え、建設業で働くうえでの強固なつながりとなっていけば、本校から建設業界に巣立った生徒たちの業界定着率も上がるのではないかと思っています。

「自主性」に重点をおいた教育現場が導いたものとは…

■ ■ 学校林ではどのようなことを行っているのですか?

来年度の一般開放を目指して、川や池の整備、見晴らし台の設置などを行っています。「市民が集まる場所にしたいよね」と概要は教員から示しましたが、それを実現するためにどうしたらいいかは生徒にお任せです。意見を出し合いながら進めています。

学校林での実習は2・3年生で行いますが、2年生の最初の頃は座学が間に合っていないので、方法が分からず作業はまったくの手探りです。川の流れを変える作業の時に、一度は流れをつくることができていたのに、翌週行ってみると水の流れが止まっていたということもありました。うまくいかなかったことは、座学でしっかり学び直します。授業で「あのときは、こうするべきだったね」と話したことを、また実習で試してみる。そうやって実習と座学を繰り返すことで理解が深まり、生徒たちは土木への興味が高まっているようです。学校林での実習を復活させてからは、土木コースの生徒は積極的に建設業への就職・進学を希望しています。特に、ゼロから計画し、形になる過程を体験することで、計画する楽しさを感じているようです。将来は公務員になりたいという生徒も増えています。

作業工程の管理はもちろん、道具も生徒たちで管理。そうすることで道具の大切さを理解し、整理整頓を率先して行うようになった。また、作業はグループわけをして実施。日報を活用し進捗状況の確認。毎回グループを入れ替えるので、次の人のことを考えて行動ができるようになった

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