FOCUS

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2019年10月号 No.512

生徒がつくった河川改修3DVRで地域住民に説明会 社会貢献性の高い学びを体系的実践

公立工業高校の中で最も歴史が古い洛陽工業高等学校と、高校ラグビーの名門・伏見工業高等学校が統合し、2016年に設立された京都工学院高等学校。領域の垣根を越えて取り組む「プロジェクトゼミ」など、ものづくり・まちづくりを体系的に学ぶ授業が特徴です。前身校のマインドを受け継きながらも、先進的な学習を積極的に取り入れ目指すものとは? 伏見工業高等学校ラグビー部OBでもある大下寛司先生に、同校で行う土木教育について伺いました。

自らの経験をベースに、土木の面白さを伝えたい

同校での学びのキーワードは、「貢献」「結集」「連携」「継続」。課題解決型学習(PBL)をベースにした「プロジェクトZERO(1年生)」および「プロジェクトゼミ(2・3年生)」をはじめ、大学や研究機関、企業・行政と連携した実践的な授業を展開しています。なかでも3DVRやドローンなど最新設備を活かした取り組みでは、3D・3DVRシミュレーションコンテストに有名企業と肩を並べて高校唯一のエントリー。5年連続受賞という快挙を果たしています。これらの取り組みを通し、生徒たちの主体的な姿勢と豊かな思考力、そして課題解決能力の習得を目指しています。

生徒たちの新しい価値の創造を支援するため、先進的な施設や専門的な設備を完備した京都工学院高等学校

 

■ ■ どのような想いで、生徒たちと向き合っていますか?

生徒たちに土木の面白さを伝えたいと思っています。私自身、中学生の時ラグビーをしていたので、伏見工業ラグビー部に憧れ建設工学科に進学。中学時代は勉強はあまり得意ではありませんでしたが、高校で学ぶ土木に関する授業、特に構造力学や橋梁設計はとても興味を持ちました。計算して、いろいろな問題を解いていくのが楽しかったですね。自身の経験がベースにあるので、スポーツで進学してきた生徒にも、学ぶことの大切さを伝えています。入学当初は建築デザインを希望する生徒が多数ですが、コース選択の希望を取る1年生の夏休み頃には、都市デザインを希望する生徒の数が上回る事もあるので、興味の呼び起こしの大切さを感じています。

 

■ ■ 具体的に、どのように生徒の興味を引き出すのですか?

主体的で対話的な深い学び(アクティブラーニング)は生徒たちの理解を深め、学ぶ姿勢を身につけるのに効果的だと思います。たとえば第1回目の授業で行う「コンセンサスゲーム」という月脱出ゲーム。月で遭難したときに何を優先的に持っていくべきか、まずは1人で考えます。そのあとグループで話し合い答えを導くと、1人で考えたときよりもJAXAやNASAが用意した正解に近づくんですね。チームで取り組む方が良い結果を出せることを、まずは体感させます。アクティブラーニングで難しいのは、生徒同士の教え合いを促すことです。そこで私は、授業のまとめに行う確認テストを工夫しています。確認テストの正解率が全体で100%だったら全員に30点加算、正解率が50%になれば加算点数は15点になるというルールをつくりました。自分が100点を取らないとみんなの点数が下がる。すると勉強が得意な生徒は、苦手な生徒に教える環境が自然とでき上がります。伏見工業時代から改良を重ねて取り組んでいますが、改良の参考にするのは生徒の声。授業最後に記入する振り返りシートには、授業に関する要望を書く欄があります。「先生はゆっくり話してほしい」「グループをつくってほしい」など意見はさまざまです。それらを吸収し、クラスによってやり方を変えています。

領域の垣根を越えたプロジェクトゼミからは、同校ならではの成果物がうまれています。
左:簡単に物が出し入れできるロッカーの作成風景
右:学校内の避難に役立つ3DVRの作成風景

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