FOCUS

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2019年7・8月号 No.510

最新機材を活用し、好奇心をかきたてる民間勤め時代の経験が活きた実習を

広島県下で唯一、普通科と工業科を併設した広島県立府中東高等学校。「地域から愛され、支持され、信頼される生徒を育成する」という教育ビジョンを掲げ、地元の各産業に多くの卒業生を輩出しています。目指すは社会ルールやマナーを遵守し、社会で認められる人材育成。民間企業から教員に転身した都市システム科・小笠原雅成先生は、自身の経験から教育現場をどのように感じているのか伺いました。

徹底したあいさつ・マナー指導で地元に受け入れられる学校に

昭和36年に広島県北川工業学校として、機械科と土木科を擁し開校した同校。現在のように普通科を併設するようになったのは、同47年からです。工業科と普通科が共にある利点は、普通科の生徒にも「建設」という選択肢を身近に感じてもらえること。将来の選択肢の幅を広げて生徒たちに示せることで、可能性も大きく広がる。それが広島県立府中東高等学校の最大の特徴です。

「研技修文」を校訓に、社会に貢献できる人材育成を目指している

■ ■ 地元からの信頼を得るために、先生が注力していることは何ですか?

「あいさつやマナー」の指導を徹底的に行っています。私は教員歴2年目で、本校が最初の赴任校ですが、礼儀についての教育がもっと必要だと感じました。そこでまず導入したのは、前職のコンサルタント会社で行っていた指差呼称・服装点検です。以前から取り組んでいた「おはようございます」「ありがとうございます」「失礼します」「すいませんでした」を推進するオアシス運動と合わせて、実習前に20~30分、全体で訓練を行ってから、各班に分かれて実習をするようにしました。当初は訓練に前向きではない生徒もいましたが、学年が上がる頃には定着。みんな「しっかりしたな」という印象に成長してくれています。他科の先生からも「都市システム科の生徒はよくあいさつができる」という評価を得ています。生徒たちの礼儀正しい様子や、ボランティア同好会の清掃活動などを通して、地域の方にも「期待している」と言っていただけるようになったのだと思います。

一生懸命に打ち込むことの素晴らしさを実感させたい!

■ 生徒たちが建設業界に興味を持つよう、どのような工夫をしていますか?

建設業の仕事を理解してもらうには、実習が一番だと考えています。私は測量を専門に仕事をしていたこともあり、測量の実習はなんとしても生徒の好奇心をかきたてるものにしたい。そこで昨年取り組んだのは地上図の作成です。グラウンドに座標を取って描いたのはイノシシ。3時間の実習時間を少しオーバーしたのですが、みんなとても積極的で。最後は学校備品のドローンを使い空撮をしました。私は常々、「一生懸命に勉強に取り組んで欲しい。それは高校生だからできることなんだよ」と伝えていますが、この実習はいい経験になったのではないかと思っています。

この実習でドローンは、生徒たちの興味をひくいい起爆剤になりました。しかし一方で、最新の機材を教育現場に持ち込む難しさもある。教える側のスキルの課題もありますが、最新機材は「誰でも簡単に作業できる」ことが開発の主流になっています。生徒たちにとっての実習は、基礎を知り、理解し、考えることを身につける場。教育の肝となる自分で考える力、理解する力をきちんと育むために、教員は適切なバランスを見極める力が必要なのだと感じています。

200点近い座標を打って作った校章。授業や実習で学んでいない技術を使った作業もあり、完成までに苦労したことも。完成後、校舎から作品を見て、「測量って結構スゴイ!」「頑張ってやったかいがあった!」と、生徒たちの自信につながった

生徒が案を出し、実習時間に作成。ドローンを使用し真上から撮影したため、キレイに撮影ができた

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