建設経済の動向

建設経済の動向
2019年6月号 No.509

建設コンサルタント会社の戦略 「i-Con」対応で進むICT導入

建設コンサルタント会社がi-Constructionへの対応や新領域への業務拡大を積極的に進めている。日経コンストラクションでは、建設コンサルタント会社のICT導入状況や再生可能エネルギー事業への取り組みなどを独自に調査。幅広い会社がICT導入を積極的に進めつつある状況を確認した。その内容を紹介する。

国土交通省が進める「i-Construction」の施策が、着実に広がっている。言葉尻だけを捉えると、この施策は施工寄りの技術というイメージが強いものの、建設コンサルタントの業務との関係も深い。そんな事実が、日経コンストラクションの独自調査で浮き彫りになった。

全国の主要な建設コンサルタント会社に対して、業務におけるICT(情報通信技術)の導入状況を尋ねたところ、回答を寄せた209社のうち、75%がドローン、3次元CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)、レーザースキャナーのいずれかの導入を進めていると判明した。

高額なレーザースキャナーも人気3次元CIM普及に地方の壁

さらに、回答を寄せた209社のうち、大手・中堅が多い売上高の上位100以内の建設コンサルタント会社に限ってみると、ドローン(写真・動画用)で70.5%、3次元CIMモデルで61.0%、レーザースキャナーで43.8%の導入率となった(図)


ドローンは、機体のコストダウンが進み、導入のハードルが下がっている。近年、多発する災害も普及を後押しする。ドローンを導入した企業の多くが、災害時の撮影で効果を発揮する点を評価していた。

機材の購入コストが数千万円のオーダーになるレーザースキャナーの導入は、規模の小さい中小の建設コンサルタント会社でも進んでいる。売上高が101位以下だった109社でも、3割超が技術導入を図っていた。国土交通省が発注するICT工事の広がりとともに、測量業務の受注機会が増えているようだ。

建設コンサルタント会社の売上規模による導入率の差が大きかったのは、3次元CIMモデルだ。売上高が101位以下の109社では、上位100社よりも導入率が約28ポイント低い33.3%にとどまっていた。規模が小さい会社に測量会社が比較的多いという事情はあるものの、自治体からの発注でCIM活用の動きが鈍い点も一因だとみられる。

こうした国と地方の壁を突き破ろうとする動きも出始めてきた。国交省九州地方整備局は、2019年度から九州・沖縄地方の8県と3政令市と共に、ICT土工事を普及させる取り組みを始めている。

この他、新たな国内市場の開拓を目指して、再生可能エネルギー分野に力を入れる建設コンサルタント会社が増えている。売上高の上位50社に限れば、半数が注力分野に掲げていた。

近年、「ESG投資」の流れを受け、自然や環境に配慮した投資が拡大。国内外から再生可能エネルギー開発に資金が流れ込んでいる。その結果、洋上風力発電の事業への投資が進み、そのための地盤調査などが数多く見込まれる。地質調査部門で首位の売上高を誇る応用地質が、18年に海底地盤の調査技術の開発などに総額2億5000万円を投資した例は、この分野への期待の大きさを物語っている。

 

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