建設経済の動向

建設経済の動向
2019年4月号 No.507

設計者・施工者が連携する契約方式

インフラ老朽化の進行で、今後、急速に増加すると見込まれる修繕工事。国土交通省ではその品質を確保するために、新たな契約方式の導入を始めている。橋の修繕工事では2016年から、施工者が設計段階から関わる方式の導入が始まったほか、設計者が施工段階に関与する方式も導入していく考えだ。

国土交通省が発注する橋梁修繕(補修)工事の件数は、最近10年間で約2倍に増加している。インフラ老朽化が進むことで、今後もさらに増えることが見込まれている。

件数の増加に伴い、様々な課題も明らかになってきた。例えば、新設工事に比べて品質の確保が難しい点だ。十分な現地調査が困難なため、工事発注時に仕様の確定が困難だったり、施工段階で見つかった損傷が品質に影響を及ぼすことに気付かずに、不適切な対策のまま工事を終えたりといった点が懸念されている。

修繕工事での品質確保などについて検討している国土交通省の「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」の維持管理部会は2018年12月、品質確保に向けて、橋梁修繕工事に新たな契約方式を導入する方針を示した。

施工者が設計段階から関与する「ECI」に加え設計者が施工段階に関与する新方式も

同部会で提示されたのは、①設計者が施工段階でも関与する方式(R-1方式)、②施工者が設計段階から関与する方式(R-2方式)、③設計と施工を分離した従来の方式――の3方式だ(下図)。施工の難易度や特殊性、発注段階で現場の条件が明確かどうかによって、これらの契約方式を使い分ける。

修繕工事は、発注段階で損傷の状況などが詳しく分からないので、着工後に設計変更が生じやすい。竣工図や過去の点検履歴が残っていない場合が多いうえ、仮設足場を使った詳細調査が実施しにくいことが要因となっている。国土交通省は、設計者と施工者が連携することで、設計変更などの手戻りを減らす考えだ。

施工者が設計段階から関与するR-2方式の一例が、技術提案・交渉方式の1つであるECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式。発注前に仕様を確定できない特殊な工事や、設計が複雑になりそうな工事が対象だ。修繕の設計段階で、施工者になる予定の建設会社が足場の設置やはつり作業などで設計者に協力する。

国土交通省は既に2件の橋梁修繕工事でECI方式を試行し、効果を確認している。2018年7月に完了した犀川大橋(金沢市)の補修工事では、施工者の川田工業が半年にわたって設計者の大日本コンサルタントに技術協力。設計段階で詳細に補修内容を決め、施工性の高い補修方法を採用することができた。

一方、設計者が施工段階で関与するR-1方式は、設計時に近接目視が困難なケースなどで採用を進めていく。損傷の状況が不明確な段階で設計することになり、施工中に新たな補修箇所が見つかる場合が多いからだ。設計者は工事の発注後、施工者が設置した足場を使って詳細調査を実施し、損傷の状況に応じて設計を変更する。こうした施工段階の業務は、当初の設計業務とは別に随意契約で発注する。

 

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