建設経済の動向

建設経済の動向
2026年4月号 No 577

BIM図面審査が始動、生産プロセス変革の一里塚に

日経クロステック 建設編集長 佐々木大輔

2026年4月1日、建築確認の新たな制度として「BIM図面審査」がスタートした。設計と審査の効率化を進める取り組みで、建築産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を促すのが狙いだ。建築実務やビジネスにどのような影響があるのか、制度のポイントを解説する。

BIMソフトで書き出した図面に基づき建築確認を行う「BIM図面審査」が始まった。申請者は、確認申請時にPDF形式の図書に加え、IFC形式のBIMデータを提出する。小規模住宅から大規模建築物まで規模を問わず、利用できる。従来の紙や電子による確認申請も引き続き利用可能で、新たな申請方法が加わる格好だ。

最大のメリットは、確認審査における整合性チェックを一部省略できるという点だ。審査業務の迅速化にも期待がかかる。従来の紙の申請では、図面間の整合性チェック、不整合の場合の修正に時間がかかっていた。BIM図面審査の対象はこれまでと同じく2次元の図面だが、BIMデータから切り出したもので、図面間の不整合は起こりにくい。さらに審査側はBIMデータを参考資料として建物の全体像を直感的に把握できるようになるため、審査を大幅に効率化できる。

BIM図面審査と従来の審査の違い。提出物は増えるが、審査では整合性確認が一部省略される。建築行政情報センター(ICBA)は「審査の効率化・迅速化が可能となるメリットの大きい制度」だとアピールしている(出所:建築行政情報センター)

建築確認制度におけるBIM活用は、DX推進の要に位置付けられ、2020年ごろから検討が始まった。基準類や資料が作成され、審査側の準備態勢は整いつつある。制度開始時点でBIM図面審査を受け付ける指定確認検査機関は、日本建築センター、日本建築総合試験所、日本ERI、ビューローベリタスジャパン、グッド・アイズ建築検査機構の5者。導入を検討する機関は他にもあり、今後増えていくと見られる。

民間企業のBIM導入は急速な広がりを見せている。国土交通省が設計事務所や建設会社を対象に実施した調査によるとBIM導入率は約6割。ただし大手が先行しており、企業間格差は大きい。国交省は導入支援を引き続き進める考えだ。BIM図面審査対応のソフトウエアも登場しており、新制度を機に一段とBIM普及が加速しそうだ。

本丸は29年開始予定の「BIMデータ審査」
ライフサイクルCO2算定でも重要に

BIM図面審査制度が導入された背景には、建築産業全体の生産性向上を促す狙いがある。1級建築士のうち60歳以上が約4割を占め、若手人材の確保も伸び悩む。限られた人材で建築生産を維持するには、BIMを軸にした業務改革が不可欠になっている。さらに2028年度から大規模事務所ビルの新築と増改築においてライフサイクルCO2の算定を義務化する制度が導入される見通しで、設計段階から材料や部材の管理ができるBIMの重要性はますます高まっている。

BIM普及を加速する鍵となるのが、計画や設計、施工、維持管理をつなぐ結束点となる建築確認のDXだ。国交省の宿本尚吾住宅局長は日経クロステックの取材に対し、「国として、建築界が安心してBIMに取り組める土壌を整える必要がある。建築確認におけるBIM図面審査の導入は、その一里塚だ」と語った。

BIM図面審査は任意の制度だが、“本丸”は2029年春の開始を予定しているBIMデータそのものを用いた審査(BIMデータ審査)にある。計画から設計、施工、維持管理まで一貫した情報活用体制が普及し、審査・検査を含めた建築生産プロセス全体がデジタル基盤に移行する未来はすぐ近くまで来ている。この流れを先取りし、今のうちからBIMの経験を積み重ねておくことが、今後の建築市場で成長するためには欠かせないだろう。

国土交通省が2025年1月に建築関連団体を通じて実施したアンケートの結果(回答数433社)。導入がある程度進んでいることが分かる。企業間格差は大きく、社員100人以下の会社(回答者の約57.3%)の導入率は約44.8%という結果だった(出所:国土交通省)

 

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