建設経済の動向

建設経済の動向
2023年3月号 No.546

迫り来る2024年問題、支援策使い早期対応を

近年、建設産業では2024年問題への関心が高まっている。同年4月、改正労働基準法に基づき、建設業における時間外労働への上限規制が厳しくなる。現時点でも十分な対応が進んでいない問題を、残り1年ほどで解決しなければならない。長時間労働に頼ってきた産業を転換するための行政の施策などを解説する。

建設業の悪いイメージとして定着している「長時間労働」。休みを取るのが難しいという理由で、建設業への就業に躊躇する若者は決して少なくない。多くの産業で人手不足が問題になるなか、労働環境の改善は建設産業の持続的な活動を守るうえで喫緊の課題だ。

この課題解決に大きな役割を果たしそうなのが、改正労働基準法だ。建設産業も労働時間の点で他の産業と同等の条件となるような規制が、2024年4月から適用される。これまで建設業において適用除外として扱われてきた時間外労働の上限規制だ。

災害時の復旧・復興の事業を除き、法定労働時間を超える時間外労働を原則として1カ月当たり45時間以内、1年当たり360時間以内に収めなければならなくなる。もちろん、社員全体の平均ではなく、全社員が条件を満たす必要がある。

臨時的な特別な事情があって、労使間で合意した場合でも、月100時間未満かつ年720時間以内に抑制しなければならない。さらに、月45時間を超える残業は、年間で6カ月までに絞られる。

長時間労働を抑制する施策の1つとして、23年4月から時間外労働に対する割増し賃金への規制も強化される。建設業を含む全ての中小企業において、月60時間を超える時間外労働に対して、賃金の割増率を25%以上から50%以上に引き上げる。

資料:厚生労働省の資料を基に日経クロステックが作成

大手もまだ対応が不十分
新たな助成制度で時短促す

一方、労働基準法における時間外労働の規制強化に向けた建設産業の備えはまだまだ十分とはいえない。それを端的に示しているのが、日本建設業連合会が22年9月に示した調査報告書だ。大手建設会社が名を連ねる同連合会の会員企業に勤める非管理職の従業員の6割が、月45時間以内かつ年360時間以内の時間外労働では収まらなかった。年720時間以内といった特例の規制も超過した非管理職の割合は3割弱に達していた。

長時間労働の是正に向けて、国土交通省では23年度から原則全ての直轄工事を発注者指定型の週休2日対象工事で公告する方針だ。同方式の場合、週休2日を達成できなかった場合に、工事成績評定で減点するといったペナルティーを科せるので、相応の効果が期待できる。

中小の建設会社における週休2日を後押しする新たな助成制度も厚生労働省が検討している。労務に関する研修や生産性向上に役立つ資材導入をはじめ、働き方改革の実現に要する費用について、従業員に与える休日設定の目標に応じて最大100万円を支給するという内容だ。23年4月からの申請受け付けを見込んでいる。

さらに、時間外労働の上限を労使間で決める「36(サブロク)協定」を見直した場合も助成の対象とする。36協定で時間外労働の上限を月80時間以上に設定している会社が上限を60時間以下に改める場合、最大で250万円を助成するのだ。

このほか、厚労省では中小規模の建設会社が働き方改革について相談する窓口を新たに設けていく方針を掲げている。

 

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