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2021年12月・2022年1月 No.534

福利厚生

社会保険労務士法人アスミル
特定社会保険労務士 櫻井 好美

profile:
民間企業に7年勤務後、2002年櫻井社会保険労務士事務所(社会保険労務士法人 アスミル)を設立。
【主なコンサルティング・セミナー内容】
就業規則・労働環境整備、人事評価制度コンサルティング、賃金制度コンサルティング、退職金コンサルティング、働き方改革セミナー、管理職向け労務管理セミナー、建設業むけ社会保険セミナー、介護セミナー、WLBセミナー、女性の働き方セミナー、学生むけ働く前に知っておいてほしいこと 等

 

福利厚生とは?

福利厚生とは、会社が従業員とその家族に向けて提供する給与以外のサービスのことをいいます。そして福利厚生には法定と法定外の2種類があり、法定福利厚生とは健康保険、介護保険、厚生年金、労災保険、雇用保険、子ども子育て拠出金等を指します。しかし、一般的に福利厚生というと、スポーツクラブの利用や人間ドックの補助といった法定外福利厚生のことをイメージする方が多いのではないでしょうか?会社は仕事をする場所であり、1日の中で1番時間を費やす場所でもあります。そのため、仕事を円滑にするため、また従業員の家族を大切にすることで、会社への安心感をもっていただくため、福利厚生の充実を図っていくことも会社としては必要なことです。

法定外福利厚生って?

法定外福利厚生について下記のようなものがあります。

法定外福利厚生について
 ①休暇 結婚、忌引き等に関する特別休暇
本人や配偶者誕生日等記念日にお休みがとれるアニバーサリー休暇
1年に1回取得できるリフレッシュ休暇(長期休暇制度)
 ②育児・介護 事業所内保育園の設置
育児と介護両立のための家事代行サービスの補助
 ③健康・医療 人間ドックの受診料
スポーツクラブの利用割引
禁煙、ダイエット等の成功へのお祝い金
 ④住宅 引っ越し費用の補助
 ⑤慶弔 出産祝い金、入学祝い金
 ⑥スキルアップ・自己啓発 研修の受講料の補助
合格者に対してのお祝い金
 ⑦コミュニケーション 社内クラブ活動補助
社内飲み会補助
 ⑧職場環境 社員食堂、社内でのお菓子食べ放題
 ⑨レクリエーション 家族を招待してのバーベキュー大会、スポーツ観戦
社内運動会

福利厚生の効果は?

福利厚生を充実させることで従業員の満足度があがります。求人においても、福利厚生の充実は求職者に「働きやすい会社」をアピールできる効果もあります。

ただし、会社としてはコストがかかり、また全従業員が満足できるものとは限りません。

導入にあたってはヒアリングやアンケートを実施し、従業員の方々がどういうものを希望しているのかをリサーチするのもおすすめです。最終的には、会社はどういう目的で導入するかをしっかり検討していきましょう。

気を付けなくてはいけないこと

2020年4月1日(中小企業の場合は2021年4月)から同一労働同一賃金が施行されました。これは正社員と非正規社員(契約社員・パートタイマー等)を比較して同じ仕事であれば不合理な待遇等を設けることを禁止したものです。そのため、今まで正社員だけが受けていた福利厚生について、今後は非正規社員(契約社員、パート社員等)にも同じような待遇をしていくケースもありますので、内容についてもしっかり検討していく必要があります。

問題とならない例

A社において、長期勤続者を対象とするリフレッシュ休暇があります。この休暇は業務に従事した時間全体を通じた貢献に対する報償という趣旨で付与していることから、通常の労働者であるXに対しては、勤続10年で3日、20年で5日、30年で7日の休暇を付与しています。この趣旨から短時間労働者であるYに対しては、所定労働時間に比例した日数を付与している。

 

  主な業務: 基礎工事業  
  従業員数: 15名

問題点

上手な異文化コミュニケーシヨンのとり方はないでしょうか?

年齢層も幅がひろく、また技能実習生も入ったことで社内でのコミュニケーションがうまくいかずに困っています。また、新規採用も苦戦をしており、何か会社の特色をだしていきたいのですが、どうしたらいいですか?

改善後

社員の声に耳を傾け いくつかの制度を導入!

社内で福利厚生に関するアンケートを実施しました。あまり堅苦しくならないよう、社内にアンケートボックスとメモ用紙を用意し「こんな制度があったらいいな、と思うことを書いてボックスに入れてください」とボックスに貼り、設置をしました。その結果から社内で検討しいくつかの制度を導入しました。

①バーベキュー大会

技能実習生の方たちが少しでも日本の生活に慣れること、また従業員の家族を招待することで、会社を知ってもらい、忙しい時期には残業もあることを理解してもらうために実施をしました。普段の仕事では世代間ギャップがあり、コミュニケーションをとることが難しかったのですが、若手を中心に企画、買い出し、当日の進行をすることで、若手にも仕事を任せることで十分にリーダーシップがとれるということが、会社全体としての共通認識となり、従業員同士のコミュニケーションが潤滑になるようになりました。

②ダイエット応援・禁煙補助

健康管理に十分気を付けてほしいということから、ダイエット、禁煙に関して達成した場合にお祝い金をだすことにしました。ダイエットに関しては、目標体重を達成し、それが3ケ月継続した場合にお祝い金が支給されます。禁煙についても、宣言してから6ケ月継続した場合にお祝い金が支給されるという制度です。これを機会に健康に気を付ける人が増えてきました。

③自己啓発制度

建設業の場合、業務上必要な資格と、直接的に必要はないが周辺知識として、もっていたらいい資格とがあります。業務上必要な資格については業務時間中に会社が費用負担して受講してもらいますが、直接的に必要でない資格については、合格した場合に合格のお祝い金を支給することで、モチベーションアップにつなげることができました。

④キャリアアップ面談

年に1回、従業員の方のお誕生日月にキャリアコンサルタントの方との面談を受けることができる制度です。これはコンサルタントの方と話すことで今までの仕事の棚卸しをし、自分のこれからを考えたときに、どんな資格が必要なのか?どんな経験が必要なのか?といったことを話す時間を作りました。これを実施することで他へ転職してしまうのではないか?という心配もあったのですが、従業員の方からは「今までの仕事の整理ができてよかった」「これからはこんな仕事もしてみたい」といった前向きな話が出てくるようになりました。

導入の結果

福利厚生を充実させたことで、社員の満足度があがり、自分の友人を会社に紹介をしてくれるといったケースもでてきました。

またバーベキュー大会の写真を会社のHPの採用ページに載せることで、若い人からの反応も多くなってきました。

● 今後の課題

自己啓発に関して、現状は本人の申告した資格に対しての補助をしていますが、今後は会社としてのキャリアパスを作り、必要資格、推奨資格、自己啓発資格等の位置づけを決め、自社での成長モデルを作成していく予定です。

1.随時見直しを!!

従業員数が多くなればなるほど、全員が満足する制度の導入は難しいものです。そのため、常に見直しをかけていくことが必要です。また、カフェテリアプランといって年に1回従業員にポイントを付与し、そのポイントの範囲で自分の好きな福利厚生を選べるという制度もあります。

2.目的を忘れない!!

福利厚生はリクリエーションを優先していくと、過熱していく傾向がみられます。あくまで会社は仕事をするところであり、仕事を円滑にするためのコミュニケーションづくりです。本末転倒にならないよう気を付けていきましょう。

3.自社にあった取組を!!

「今年は健康をテーマに」であれば法定外健診や人間ドックの補助等、自社の取組にあった福利厚生をテーマにしていきましょう。

 

 

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