連載

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2021年12月・2022年1月 No.534

技と力を駆使した、暮らしを支える土台造り。確かな想いが、新たな造り手に受け継がれてゆく。

技と力を駆使した、暮らしを支える土台造り。
確かな想いが、新たな造り手に受け継がれてゆく。

人びとの暮らしを支える多くの建造物は、それを下支えする基礎があってこそ成り立つもの。そうした現場を担う鳶・土工工事業は、文字通り社会を支える仕事といえる。今回は金沢を拠点とする株式会社 松原光工業で工務部を率いる小牧さん、若き力で現場を担う森さんに話を伺った。

小牧 幸大(こまき ゆきひろ)さん

1969年7月生まれ 大阪府出身

様々な建設現場を担い培ってきた、確かな技術・確かな想いを後進へ。

新幹線の高架橋や大規模な病院、集合住宅や物流倉庫と、様々な現場に携わってきた小牧さん。「いずれ誰かが住むマンション、いずれ誰かが使う道路…私たちが手掛けるのは、そうした人びとの生活と密接に係わるものがほとんど。確かな仕事が求められるぶん、やりがいも大きいです」。入職当初は一職人として重機を駆使して活躍し、後に管理も担う立場となった現場を知り尽くすスペシャリストだからこそ、その想いは本物だ。

ICT導入や新素材の登場など日進月歩の建設業界にあって、変化への対応にも余念がない。「これまで経験豊富なベテランが行ってきた作業も、機械の力でまかなえるケースが増えました。生産性が高まる一方、少人数での作業では目の届かない部分が生まれ、新たなリスクにつながる恐れもあります。私たちの仕事は、安全こそ何よりも優先すべきこと。他の現場事例の共有や安全大会の実施により、いかに安全に仕事を進められるかを念頭に置いて段取りを組んでいます」。

森さんたち若手の育成も、注力する取り組みの一つだ。若手に対しては「何をするにもまずは資格から」と話す。「この仕事は資格を取らなければ関われない作業が非常に多いため、積極的な取得を促しています。資格を取る際には、それにふさわしい実務経験も求められます。まずは経験を積み、条件をクリアする。そうして目標を達成していくことで、仕事にも自ずと広がりが生まれます」。

入職以来ベテランたちに育てられたという小牧さんは、そうした人びとの想いも伝えたいと話す。「一緒に働いてきた職人たちは、まさにスペシャリストな人ばかり。しっかりと揉まれたからこそ、私も成長することができました。昔と今では現場も教え方も異なりますが、“一人前を育てる”という気概を森たち後進にも確実に伝承し、会社を盛り上げていきたいですね」。

 

森 和希(もり かずき)さん

1999年7月生まれ 石川県出身

経験を重ねるごとに楽しさも増す。スペシャリストの道を目指す若き力。

「最初は何もなかった更地に、新しい建物や道路を造っていく仕事。私たちが担うのは、まさにその基礎となる部分です。やはり完成を迎えた際には大きな達成感を覚えます」と、この仕事の醍醐味を語る森さん。入職してまだ数年ながら、小牧さんの代理として現場に入り、ひと回りも上の職人たちを取りまとめる立場にもなった松原光工業の若きホープだ。

小さな頃から重機オペレーターとして活躍する親の背中を見て育ってきた。見慣れた業種ではあるものの、入職して驚く場面も多々あったという。「若いので体力仕事は得意なのですが、それでも冬の現場作業で感じる寒さには驚きました。充分に防寒したつもりでも、手元が冷えてくるとこんなにも動けないものなのだな、と」。そうした厳しい現場を経験しながらも、森さんは「この仕事は楽しい」と断言する。「入職して以来、経験こそが大切だと常々感じています。現場で仕事をこなすごとに成長を実感でき、わかる範囲も広がっていく。そうするとできることも増え、さらに目の前の仕事が楽しくなっていくんです」。

そんな森さんの基礎を育てたのは、業界に関する知識や重機・建設機械のスキルといったイロハを教えた小牧さんだ。「第一印象では少し怖そうな人だな…と思ったのですが(笑)、わからないことはその都度丁寧かつ詳細に教えてくれます。掘削や砕石の際に機械を水平に保つ技術など、目の前で様々なお手本を示してもらえることで、確かな技術を学ぶことができます。上司としてだけでなく、一人の職人としても憧れの存在ですね」。小牧さんからも、さらにハイレベルな経験を積み重ね、臨機応変な判断ができるスペシャリストになって欲しいと期待を寄せられている森さん。「これからも経験を重ね、まずは2級土木施工管理技士、ゆくゆくは1級を取得し、小牧さんのように活躍していきたいです」と笑顔を見せた。

 

社会を支える優れた技と力、確かな想いは、新たなスペシャリストへと受け継がれる。

取材協力: 株式会社 松原光工業

 

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