連載

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2021年4月 No.527

自然こそが先生。培われてきた技術と工夫を受け継ぐ造園業の奥深さ。

自然こそが先生。
培われてきた技術と工夫を受け継ぐ
造園業の奥深さ。

渋谷区にある重要文化財 旧朝倉家住宅。100年以上も昔に造られた建物とともに広がる美しい回遊式庭園は、見どころの一つだ。その整備を担う東光園緑化株式会社の三浦さん、桑園さんに話をうかがった

造園業に進んだきっかけは?

三浦さん:戦後の焼け野原が広がる・・・そんな風景の中、大工さんが次々に家を建てていくのを見て、ものづくりに魅力を感じ、兄と同じ造園業の道に進みました。旧朝倉家住宅の庭園整備をはじめ、住宅や商業施設・文化施設など様々な造園工事に携わり、今に至ります。

桑園さん:私は大学で森林生態学を学んだ後、一年半ほど海外で自然保護のボランティアに携わりました。帰国後は別業種につきましたが、植物や樹木に関するプロになりたい思いが強くなり、造園の世界へ。現在は木の剪定や維持管理の現場代理人として現場に指示を出したり、クライアントとの打合せなどの監督業務を行っています。

造園業に大切なこと、この仕事の奥深さとは?

三浦さん:“あるものを大事にする”ということ。旧朝倉家住宅などの文化財を整備する際、建物や庭を傷めてしまっては意味がありません。今あるものを傷つけない細心の注意が必要です。また石の据え方ひとつをとっても、一寸の違いでも、庭の表情が変わってくるため、力強く見せるなど魅力的なポイントを見出し配置することが大切ですね。

桑園さん:石や木は同じものが一つとしてないので、見せ方・据え方の判断はいつも迷いがちです。いくつもの石や木に触れ、多くの工事を手がけてきた三浦さんは、そうしたことを瞬時に判断できる頼りになる存在です。また昔のものをそのままに残していくことが求められる場合もあれば、商業施設や娯楽施設ではエンターテイメントな新しい要素が求められるケースも。施設や用途によって両極端なものを求められるのは、難しくもあり、面白いところでもあります。

仕事の中での印象深いできごとや思い出は?

三浦さん:かけだしの頃、親方から「俺たちの先生は自然だ」と言われたことは 今でも記憶に残っています。石や木、草などの自然に常に目を向ける大切さは、しっかりと下の世代に伝えたいですね

桑園さん:旧朝倉家住宅の整備の際、池の底に壺が埋まっているのを発見し、「なんだろう?」と話していたところ、三浦さんがすぐに「金魚が隠れたり、冬越えをするためにあえて設置している」のだと教えてくれました。三浦さんの知見の深さもそうですが、知らないことに出合い、教わるたび、職人の工夫や造園の世界の奥深さを感じます。

三浦さん、桑園さん、お互いの印象は?

三浦さん:とても勉強熱心で、街路樹剪定士や樹木医の資格なども意欲的に取得していました。どんな高い壁に当たろうと、何度も挑戦していく姿勢に感心しています。

桑園さん:すごく親切です。また、明るくハツラツとした人柄です。三浦さんが描かれる図面は木々の枝ぶりまでとても繊細に表現されているので、性格とのギャップを感じることもあります(笑)。

今後の抱負・展望は?

三浦さん:木の植え方や石の据え方など、少しでも多くのことを若い職人たちに伝えたいです。また米寿(88歳)で現役の大先輩をはじめ、80歳を過ぎても元気な職人は何人もいます。そうした方から見れば、私もまだまだ下っ端。諸先輩方に負けないよう、これからも頑張っていきます。

桑園さん:本や資料などの目に見える情報だけでなく、現場でしか体感できないことを肌で感じ、しっかりと蓄積していきたいです。造園業には、途絶えさせてはいけない工夫や技術がたくさんあります。先輩から学べる事はできる限り吸収して後々にも残していきたいです。

培われてきた知識や技術、目には見えない経験や想い。そのバトンは、新たな世代へさらに強く受け継がれていく。

 

取材協力: 渋谷区、東光園緑化株式会社
撮影協力: 重要文化財 旧朝倉家住宅

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