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2021年2月 No.525

技術がそのままでる職人仕事。だから「左官」はおもしろい!

技術がそのままでる職人仕事
だから「左官」おもしろい!

登録左官基幹技能者
株式会社ホソイ
鈴木 太一(すずき たいち)さん
1974年4月生まれ 
埼玉県出身

愛用のコテを手に、目の前の壁や床を巧みな動作で塗り上げていく姿はまさに職人。他の専門職種にも“左官は真似できない”といわれるほど、その技は軽やかにして繊細だ。「技術がそのままでる仕事なので、一人前の仕事ができるようになるまでは時間がかかります。だからこそ、できるようになるとおもしろいんです」と話すのは、株式会社ホソイの鈴木太一さん。都心にそびえる高層マンションやオフィスビルなど、多くの現場で仕事を任されてきた登録左官基幹技能者だ。

未経験で入職した鈴木さんに技術のイロハや職人としての在り方を教えてくれたのは、鈴木さんが幼いころから左官職人として活躍してきた父だった。親方としての顔を持つ父には“後ろ姿に頭を下げられる人間になれ”と教えられた。「たとえば現場監督に難しい仕事をお願いされた時、無下に断ったり不平不満をぶつけるのではなく、気持ちよく引き受けて丁寧な仕事をすること。頼られた仕事、任された仕事をしっかりと終えて、帰っていく背中にも“ありがとう”とお礼を言ってもらえるような姿勢を常に持っておきたいと思っています」。困難な仕事であっても、工夫やアイデアをもって解決することを大切にしていると語る鈴木さん。そうした姿に周りも厚い信頼を寄せている。「尊敬する現場監督が“鈴木さんはイザという時もしっかりやってくれる人”と言ってくれていたそうで、それを人づてに聞いたときは嬉しかったですね。信頼してもらえると、もっと期待に応えたくなります」と微笑む。丁寧な仕事を積み重ねることで、おのずとアドバイスを求められる場面や新たな現場から声がかかる機会も多くなる。「親方(父)からは、“呼ばれる職人になれ”という教えも受けました。以前いっしょに仕事をしていた現場監督などから“鈴木さん、こっちの現場に来てよ”とお呼びがかかると、必要とされているのを感じて嬉しいですね」。

「しっかりとした技術が身につく、文字通り“手に職をつける”ことができる仕事」と左官業の魅力を語る鈴木さん。この世界へ足を踏み入れようとしている若い人たちへのエールも伺った。「人に感謝される職人になってほしいですね。また技術的なことはもちろん大切ですが、目の前にある正解だけでなく、その時々に応じて工夫を凝らし、より良い仕事や効率よく確実な工程を組める、そんな“巧さ”を持った職人を目指してほしいです」。そう朗らかに語る表情の中に、受け継がれた職人の誇りが見えた。

 

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