連載
就業規則について①
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社会保険労務士法人アスミル
特定社会保険労務士 櫻井 好美
民間企業に7年勤務後、2002年櫻井社会保険労務士事務所(社会保険労務士法人 アスミル)を設立。
【主なコンサルティング・セミナー内容】
就業規則・労働環境整備、人事評価制度コンサルティング、賃金制度コンサルティング、退職金コンサルティング、働き方改革セミナー、管理職向け労務管理セミナー、建設業むけ社会保険セミナー、介護セミナー、WLBセミナー、女性の働き方セミナー、学生むけ働く前に知っておいてほしいこと 等
就業規則の必要性
前回、雇用契約書について解説をしました。労働条件の明示は法律上の義務であり、労働者が1名でもいれば労働条件の明示は必要になってきます。これと比較して、就業規則とは従業員が10名以上の場合に作成・届出の義務が発生するものです。しかし、最近では労使トラブルも増えており、従業員の人数にかかわらず会社のルールを明確にすることで、トラブルの防止を図り、従業員にとって安心して働くことができる環境をつくることができます。就業規則を難しくとらえず、まずはそれぞれの会社のルールを明文化していきましょう。
就業規則とは?
図表でみると、使用者と労働者はあくまで対等です。しかしながら、一般的には、使用者より労働者の立場が弱いものです。そのため、この両者の関係が一方的にならないように定められているルールが、労働基準法、労働安全衛生法等の労働に関する法律になり、それをより具体的に会社のルールとしたものが就業規則になります。
働くということ
就業規則の作成義務
就業規則は会社単位ではなく、事業所単位で作成をします。そして1つの事業所で従業員が常時10人以上いる場合は必ず作成をし、管轄の労働基準監督署に届出をしなくてはなりません。
就業規則の作成義務
就業規則の作成手順
就業規則は、原則会社が自由に作成して頂いてかまいません。法律を下回ることなく、公序良俗に反することがなければ、従業員の方々の同意は必要ありません。就業規則を提出の際に「従業員代表者の意見書」を添付しますが、たとえこの意見書に反対意見が書かれていたとしても就業規則の効力に影響はありません。意見を聞くという事実が必要になります。
就業規則の作成・変更、届出の流れ
就業規則へかかなくてはいけないこと
就業規則には、必ず記載しなくていけない事項(絶対的必要記載事項)と、もし会社で決まっているのであれば記載しなくてはいけない事項(相対的必要記載事項)の2つがあります。
必要記載事項
【絶対的必要記載事項】 ①労働時間に関すること ・始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇 ・交代制の業務の場合は、就業転換時に関する事項 ②賃金に関すること ・賃金の決定方法 ・賃金の計算および支払いの方法 ・賃金の締め切り日および支払いの時期 ・昇給に関すること ③退職に関すること ・解雇の事由に関すること 【相対的必要記載事項】 |
就業規則を作成する前に
就業規則を作成するにあたって、まず、同じ会社の中にどのような働き方をしている人がいるか整理をする必要があります。建設業の場合、現場に出る方と社内で事務をされている方とでは、労働時間や休日が違うというケースをよくみます。違う働き方をしている人がいて、それぞれの条件が違うのであれば違いを記載する必要があります。よく、他社さんの就業規則をもらったとか、ネットからひな形をダウンロードしたというお話を聞きます。これは決して悪いことではありませんが、自社用にアレンジしておかないと、事務職の方は土日が休みで、作業員の方は土曜日が出勤日だとした場合、就業規則は土日が休みとなっていれば、その作業員の方の土曜日は休日出勤となり、休日分の割増賃金を払う必要がでてくる可能性があります。まずはそれぞれの労働条件を整理してみましょう。
例 就業規則を作成する前に
就業規則の中身
就業規則の中には、「就業規則でかかなくてはいけないこと」で解説をした、労働条件に関することと、もう1つ会社のルールである服務規律について記載をします。服務規律には一般的な心得的なものや、遵守してほしいことを記載します。また、判例では、「企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なもの」であり、「労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負う」(富士重工業事件 最高裁第三小(昭和52年12月13日))との判断があります。そのため、服務規律は労基法上の記載事項ではありませんが、会社としてのルールを明文化することが大切です。服務規律は働く上での大切なルールなので、会社によっては服務規律だけを抜粋し、イラスト等を入れ「従業員ルールブック」としている会社もあります。
建設業の就業規則
建設現場では、雨天で施工ができなかった場合の取り扱いや、非常時の考え方等、雇用契約書だけでは記載しきれないことが多くあります。そのため、小さな会社であってもルールをつくることが、日常の業務を整理することができ、従業員の安心感にもつながっていきます。まずは会社のルールを明文化することからスタートしていきましょう。次回は、具体的な就業規則の中身について解説をします。
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