連載

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2017年7・8月号 No.490

屋上散歩 目黒天空庭園・おおはし里の杜(東京都目黒区・大橋ジャンクション)

2010年の開通以来、都心の交通網に欠かせない存在となった大橋ジャンクション。国道246号線沿いにある壁に覆われたジャンクションは、郊外のとは異なる重厚感にあふれている。これは騒音や大気汚染など周囲の環境を考慮し、高架部分を覆蓋化したため。そしてこのジャンクションの蓋の上、つまり屋上には、運転中には決して見ることができない2種類の楽園があるのだ。

都会のオアシス「目黒天空庭園」

楽園の一つ「目黒天空庭園」は、ループ状になった道路に沿って作られた長さ約400メートル、広さ約7000平方メートルの区立公園。上から見ると見事に楕円形の形をしており、端と端との高低差はなんと約24メートル! 10のエリアに分けられた庭園は、それぞれテーマに沿った植栽が行われ、四季折々の花を咲かせている。集合住宅や目黒区立大橋図書館にも隣接しており、勉強や調べ物の合間に、息抜きで訪れる人も多く、晴れた日には富士山も望める都会のオアシスだ。

緩やかなスロープに沿って四季折々の草花が。奥の建物はクロスエアタワー。1階が目黒区立図書館でその上は住居になっており、同地に住んでいた元住民も多く入居している。

めったに入れない「おおはし里の杜」

もう一つの楽園は自然再生緑地「おおはし里の杜」だ。こちらは、大橋ジャンクションの内側にある大橋換気所の屋上を利用している。急斜面を有する換気所ならではの特殊な建物構造を、河岸段丘と周囲の里山に見立て、林や草地、水田などを設置し昭和初期の目黒川流域の自然を再現した。空中庭園と大きく異なるのは、生態系維持のため公開日以外は入場禁止。都会の中心で「手付かずの自然」が人工的に作られ、守られ続けているのだ。
さらに、この特殊な環境は学習の場としても活用されている。6月のある日、目黒区立菅刈(すげかり)小学校5年生が同地内の水田で田植えを行った。みんな初めての田植えに戸惑いながらもすぐにコツを覚え、順調に植えていく。この学習は今年で7年目。秋に収穫しおにぎりを作るまでを学習するそうだ。

保護者の方や同地を管理する首都高速道路株式会社社員、NPO法人など関係者も加わってにぎやかな田植えに。

高所の水田ということもあり苗はビル風に強い品種のもの。20㎏のお米が穫れるそうだ。

現在、里の杜にはヒヨドリやハクセキレイ、アブラゼミなどが立ち寄っていることが確認されている。開通以来、大幅な渋滞解消に寄与している大橋ジャンクションは、人のみならず、鳥や虫にも憩いの場を提供してくれている。一度はクルマではなく徒歩でジャンクションを訪れてみるのもオススメだ。

*管理者は除く。

(取材・文 浦島 茂世)


目黒天空庭園・おおはし里の杜への行き方

東急田園都市線「池尻大橋」駅東口から渋谷方面へ徒歩5分
開園時間:午前7時~午後9時
※「おおはし里の杜」はクロスエアタワー前の東口広場から見ることができる。年に数回一般公開日がありその日は入場自由。公開日は首都高速道路株式会社のホームページ(http://www.shutoko.jp/)などで告知している。

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