建設経済の動向

建設経済の動向
2019年5月号 No.508

公共工事の設計労務単価 7年連続引き上げで過去最高に

建設投資が増加傾向にあるなか、建設業界は深刻な人手不足が続く。これに対応すべく、国土交通省は公共工事設計労務単価を改定。2019年3月から適用する単価を、前年度に比べて平均4.1%引き上げた(加重平均)。労務単価は2013年度以降、毎年大幅に引き上げられており、公表を始めた1997年度以降で最高額となった。

公共工事設計労務単価は、建設業で働く人の賃金を決める基になるものだ。直轄・補助工事を対象に実態調査を行って実勢価格を反映し、各年度当初(近年は2月または3月)に改定を実施している。

今年は2月22日に、2019年3月から適用する単価を発表した。全国・全職種を加重平均した労務単価は1万9392円。前年度から、全国・全職種の単純平均で3.3%、同加重平均で4.1%、それぞれ引き上げた。国土交通省が労務単価の公表を始めた1997年以降では最高額を記録した(下図)

最近は毎年2~6%ずつ引き上げ
19年度は12年度のほぼ1.5倍に

公表初年度の1997年、労務単価は1万9121円(以下も、単価や増減率は全国・全職種の加重平均)だった。1999年度まではほぼ横ばいだったものの、2000年度は前年度比12.5%減と、大幅に引き下げられた。その後も2012年度まで、ほぼ一貫して下落。2012年度は1万3072円と、1997年度に比べると31.6%も少なくなっていた。

2012年といえば、前年に東日本大震災が発生し、その復旧・復興需要が急増してきたタイミングだ。人手の不足感は一気に高まり、建設業界では将来の担い手不足への危機感がにわかに叫ばれ始めた。

担い手確保には、給与や福利厚生といった待遇の改善のほか、業界の長期的な安定が欠かせない。そこで国土交通省は2013年度から、政策的に労務単価を引き上げる策を講じた。社会保険未加入企業の加入促進を図る目的で、法定福利費相当額を設計労務単価に含めるように算定方法を変更した。

まずは2013年度、前年度に比べて16.1%の大幅引き上げを実施。その後も毎年2~6%ずつ上昇した。その結果、2019年度の労務単価は、2012年度比で48.3%増となった。

職種別に見ると、前年度に比べて最も上昇率が高かったのは、全国的に不足が指摘されている交通誘導警備員だ。前年度に比べ、交通誘導警備員Bが7.0%、同Aが6.8%、ぞれぞれ上昇した。トンネル特殊工、配管工、普通作業員がそれに続く。

東日本大震災の「被災地加算」は継続
東北地方は3県以外でも高い伸び率

労務単価は全国でおしなべて上昇しているが、上げ幅は地域によって偏りがある。

例えば、東日本大震災で被災した岩手県、宮城県、福島県。これら3県を対象に実施してきた労務単価の引き上げ措置は、2019年度も継続する。被災3県の平均を見ると、2019年度は2012年度に比べて60.4%の増額になった。

また、東北地方は被災3県に限らず労務単価の上昇が目立つ。例えば普通作業員と鉄筋工について、2012年度から2019年度までの上昇率を都道府県ごとに比べてみると、上位6カ所は全て東北地方だった。秋田県が普通作業員で3位、鉄筋工で2位、山形県が普通作業員と鉄筋工でそれぞれ4位といった具合だ。石川県や富山県など、北陸地方の上昇も目立つ。一方で、近畿地方と中国地方の各府県は上昇率が鈍い傾向が見られた。

 

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