従業員のための就業規則

従業員のための就業規則
2019年2月号 No.505

社長の責任! 従業員のための就業規則 〜働き方改革と1年単位の変形労働時間制の利用 ①〜

本シリーズは中小建設産業の働き方改革を成功に導くため、働いていて楽しい職場を作り、生産性を高める「就業規則の整備」の推進を目的として、大都市の郊外にある老舗建設会社(従業員50名)を舞台とした従業員の会話形式で就業規則に関する疑問やポイントを説明します。
※就業規則は、労働基準法では常時雇用する労働者(正社員・契約社員・パート)が10人以上の場合、就業規則を作成して労働基準監督署への届出が必要とされています。

原案作成 手島 伸夫

一部上場建設会社に34年勤務して、社長室次長、ISO品質保証システム部長を歴任。中小企業診断士、社会保険労務士、1級土木施工管理技士

スクリプト 廣津 栄三郎

一部上場建設会社に37年勤務して、技術営業部長や関連会社の社長を歴任する。技術士、測量士、工学博士        

 


 「1年単位の変形労働時間制」とは、業務に繁閑のある事業場において、繁忙期に長い労働時間を設定し、閑散期に短い労働時間を設定することにより効率的に労働時間を配分して、年間の総労働時間の短縮を図ることを目的にしたものです。第4話・5話では、老舗建設の労使協定で設定した条件を元に制度のポイントを説明します。(詳しくは厚生労働省HPまたは各都道府県労働局・労働基準監督署にお問い合わせください。)

袋小路くんと勤怠さんの会話

勤怠さん
知人社長への説明にあたり、老舗建設に例えてプレゼン資料を作成してみましょう。
袋小路くん
変形労働時間制は、原則として「対象期間を平均して1週40時間以内」とすれば、所定労働時間を調整できるので、年間の繁閑差が大きい建設業には向いている良い制度であることがわかりました。
勤怠さん
この制度は、繁閑に応じて「①休日を移動する方法 ②1日の所定労働時間を変動する方法」の2つの考え方があるのよ。
袋小路くん
課長から当面は、①の休日を移動する方法で考えるように指示がありました。
勤怠さん
この制度は「労使協定」で労働者の代表と合意する必要があるのよ。
袋小路くん
わが社の工事部の繁忙期は、11月と3月ですから、この月を軸に休日を工夫することですね。
勤怠さん
「労働局の手引き」にある1年単位の変形労働時間制を実施するときに締結する5項目をうちの会社に当てはめて、次のようにしましょう。

 老舗建設の「労使協定」の5項目は、次の内容とする

  • ① 対象労働者の範囲→「工事部を対象」とする。
  • ② 対象期間→1年間として、起算日は給与計算に合わせて4月16日とする。
  • ③ 特定期間(12日間連続労働日とすることができる)→11月1日~20日と3月1日~20日とする。
  • ④ 労働時間→7時間30分に固定する。労働日と休日は「工事部のカレンダー」として明確にする。
  • ⑤ 労使協定の有効期限→1年間とする。
勤怠さん
対象期間における労働日数の限度は原則として1年間に280日に限定されるから、1日の所定労働時間と年間休日数に注意が必要ね。
袋小路くん
年間の「総労働時間」を設定し、ひと月あたりの労働時間を決めて休日を定めたカレンダーを作成してみます。カレンダーは30日前に作ればいいのですね。
勤怠さん
そうね、1年間のカレンダーを作らなくても1ヶ月ごとに休日を定めたカレンダーを作って、労働日や労働時間をチェックしましょう。

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