連載

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2018年12・2019年1月号 No.504

社長の責任! 従業員のための就業規則 〜働き方改革と移動時間などの計算方法〜

本シリーズは中小建設産業の働き方改革を成功に導くため、働いていて楽しい職場を作り、生産性を高める「就業規則の整備」の推進を目的として、大都市の郊外にある老舗建設会社(従業員50名)を舞台とした従業員の会話形式で就業規則に関する疑問やポイントを説明します。
※就業規則は、労働基準法では常時雇用する労働者(正社員・契約社員・パート)が10人以上の場合、就業規則を作成して労働基準監督署への届出が必要とされています。

原案作成 手島 伸夫

一部上場建設会社に34年勤務して、社長室次長、ISO品質保証システム部長を歴任。中小企業診断士、社会保険労務士、1級土木施工管理技士

スクリプト 廣津 栄三郎

一部上場建設会社に37年勤務して、技術営業部長や関連会社の社長を歴任する。技術士、測量士、工学博士        

 


第3話では、勤務時間の中の「移動時間に関する問題点」や、「36協定の必要性」に関するポイントを説明します。

遠距離移動について立ち話

超勤課長
袋小路くん、先日受注した銭倉様の別荘建設現場は、当社としては珍しく遠距離の山奥で移動時間がかかるんだよねぇ~。
袋小路くん
聞きましたよ! 事務所からマイクロバスで1時間以上かかるそうですね。
超勤課長
そのことだけど、バスの運転手は業務として働いているけれど、乗っている他の者は居眠りをしているだけだから、労働時間ではないよねぇ~。それを就業規則に明記して欲しいんだよねぇ~。

対応策について事務室での会話

袋小路くん
勤怠さん。超勤課長は、遠距離現場への移動時間は、「ノーワーク・ノーペイ」の原則で、賃金を支払う労働時間から外すのが、理屈に合っているというのですが・・・。
勤怠さん
なに言ってるの、超勤課長の“へ理屈”を就業規則に入れても実態が「会社の拘束時間」なら労働時間だし、残業時間にもなるわよ!
袋小路くん
やはりそうですよね。居眠りしていても、会社の都合で拘束しているわけですから現場への移動時間に賃金が発生するのは当然ですよね!
賢説課長
そうだね。「労働時間とは、使用者の指揮監督下にある時間であり、それは使用者の明示または黙示の指示により業務に従事する時間」だからね。
勤怠さん
当然、事務所と現場間の移動時間も労働時間になるのよ。(総設事件・東京地裁 平成20年)
袋小路くん
その他に、例えば明確な指示がないけれど、始業時刻前に必要な道具や資材の準備、車両の積み込み作業を行う場合はどうなるのですか?
勤怠さん
それが、「黙示の指示」があったと見なされる労働時間よ。作業後の道具や資材の跡片づけも当然労働時間になるのよ。
袋小路くん
そうすると、たとえば始業の8時30分から終業の5時まで現場で働いて、会社に戻って6時30分まで跡片づけをすると、1時間30分間の「残業の割増賃金」の対象になるということですね。
勤怠さん
そこは、もう一つ注意が必要なのよ。会社で決めた「所定労働時間は7時間30分」だけど、割増賃金の対象となるのは、「法定労働時間の8時間」を超えた1時間分だけなのよ。
袋小路くん
なるほど~所定労働時間と法定労働時間の差が30分あったという事なんですね! ところで働き方改革関連法で、建設業は残業時間の上限規制が5年間猶予されたから、当面36協定は不要ですよね。
勤怠さん
そこを勘違いする人がいるけれど、1日8時間、週40時間を超える残業をさせる場合は、「上限規制の5年間猶予」に関係なく36協定は従来通り必要なのよ。
袋小路くん
やはり、10人以上の会社は、建設業でも36協定は出さなければならないのですね。
勤怠さん
そこも違うの!10人以上というのは就業規則の作成義務のことで、36協定は、1人でも労働者がいて残業をさせる場合には必要なのよ!

ポイント1

和歌三社長
☎もしもし、賢説課長、和歌三です。大学の友人が東北地方で建設会社を経営しているんだけど、彼が「1年単位の変形労働時間制」の就業規則の作成ポイントを教えて欲しいといってきたんだよ。来月来るので、資料の準備よろしく!
賢説課長
☎承知しました。(電話を切る) 袋小路くん、社長から頼まれ事がきたよ!
袋小路くん
また仕事が増えちゃったよ~~~トホホホホ~~~

ポイント2

36協定:残業や休日労働に関する手続き(労働基準法第36条参照)
就業規則:事業所全体に関する労働条件が記載された書類で常時10人以上の労働者を使用する事業所に義務(労働基準法第89条参照)

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