連載

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2017年4月号 No.487

マチナカ美術館 白い彼が見つめる先は…!?

普段は意識しないものの、街の中にはたくさんの芸術作品、いわゆる「パブリックアート」があふれています。毎日多くの人が通っているのに、気づかれない路上の彫刻もあれば、渋谷駅のハチ公やモヤイ像のように、街のシンボルとして親しまれているものも。「マチナカ美術館」は、そんな街のなかに溶け込むアートについて隔月で紹介していきます。
あなたの家の近所にも、きっとアートがあるはず! ナビゲーターは美術館や街歩きにも造詣が深いフリーライター浦島茂世さんです。

肩口にある文字に注目!

今回訪れた街は虎ノ門。虎ノ門ヒルズが竣工し、環状2号線が開通した2014年以降、急速に盛り上がりを見せている街だ。この虎ノ門ヒルズ周辺を歩いていると、森タワーのそばに膝をかかえて座る人物像が見えてくる。これはスペインの美術家、ジャウメ・プレンサの《ルーツ》という作品。彼(?)の姿をよく見ると、ひらがなや、アラブの文字など8つの言語の文字で白い体が構成されている。桜田通りの方面から見てみると、建設の「建」の文字も肩口に。これは「多様な文化の違いをこえて、人々が平和に共存すること」という作者の思いを意味しているもの。そして、この像の目線は新虎通りの方向をじっと見つめている。新虎通りの先にあるのはお台場、そして世界中から人々が集まる五輪会場。そう、多様性を願うこの土地ならではのアートというわけ!
ちなみに、港区を中心に都市開発を手掛ける森ビルは、街の成熟には文化の成熟が必要不可欠と考え、アークヒルズや六本木ヒルズなど、開発する都市に系列の森美術館と積極的にアートを取り込んでいる。《ルーツ》も、虎ノ門周辺で働く人や住民にはすっかり顔なじみの存在に。春や秋には、彼を囲んだヨガ教室も開かれている。また虎ノ門は2019年頃にBRT(バス高速輸送システム)のバスターミナル、その後東京メトロ日比谷線虎ノ門新駅(仮称)の計画も予定されている。今後
ますます発展していく虎ノ門は、アートが身近にある街だ。

夜はライトアップされ、日中とはまた違う雰囲気に。

春と秋には《ルーツ》を囲んでのヨガ教室も開催。

《ルーツ》を見るには…

一番近い最寄り駅は東京メトロ銀座線 「虎ノ門駅」。1番出口より徒歩約5分、虎ノ門ヒルズのオープンスペース オーバル広場にある (住所:東京都港区虎ノ門1-23-3)。

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