現場の安全12か月!

現場の安全12か月!
2025年5月号 No.568

5月 梅雨目前、雨の季節に備えて―自然の恐ろしさを学ぼう

独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 安全研究領域特任研究員 高木元也

建設現場での安全活動は日々行われているものの、それでも起きてしまう事故。
本稿では、四季の移り変わり、年中行事、1年の流れなどを踏まえ、毎月のテーマを掲げ、重点的に安全活動を行うことを提案するものです。現場の安全活動をより活発化させましょう!

5月 梅雨目前、雨の季節に備えて―自然の恐ろしさを学ぼう

最近の異常気象は1時間100mmの集中豪雨も珍しくないなど、大雨による労働災害は後を絶ちません。大雨以外にも、強風、自然界の危険有害物質、夏の暑さ、落雷、雪、枯れた木、ハチ等が原因の労働災害などが多発しています。
こうした労働災害の発生を防ぐためにも、自然の恐ろしさを学ばなければなりません。

大雨

近年、全国至る所で、上空に線状降水帯が停滞するなどにより、異常な大雨が降っています。過去をさかのぼれば、大雨により多数の死者がでた労働災害もあります。大雨の危険性を認識し、教訓にしなければなりません。

災害復旧工事で法面保護作業中の土砂崩壊事故(秋田県/2013年11月)

法尻付近で布団かごの設置作業中、大雨で地盤がゆるんだため土砂崩壊が発生。作業員5人が生き埋めとなり死亡した。

下水管内での流され事故(東京都/2008年8月)

下水管更新工事で管内作業中、上流側の突然の大雨により管路内が急激に増水し5人が流された。その直前まで現場には雨が降っていなかった。

強風

突然の強風により、足場の崩壊もよく起こります。

足場倒壊事故(東京都・埼玉県/2025年2月)

関東地方に朝から強い北風が吹き荒れ、墨田区(東京都)の工事現場で、高さ約7mの防音シート付き足場が倒壊。
春日部市(埼玉県)の工事現場でも足場が崩れ隣接アパートに接触するなど、足場倒壊が相次ぎました。

自然界の危険有害物質

自然界には、可燃性のメタンガス、有毒な硫化水素などの危険有害物質が存在しています。過去には、工事中にそれらに突然襲われ、一度に何人も亡くなる悲惨な労働災害が発生しています。

マンホール内でのメタンガス爆発(東京都/2022年12月)

排水施設工事現場でメタンガス爆発が発生し、マンホール内の深さ24m地点ではしご交換作業をしていた作業員2人が死亡した。

配管の修理中、硫化水素中毒(秋田県/2015年3月)

源泉施設で、雪洞の中で温泉用配管の修理中、作業員2人が倒れ、助けに入った市職員とあわせて3人が死亡した。
配管から出た硫化水素が雪洞に溜まったことが原因。

様々な自然の脅威

その他にも、様々な自然の脅威により悲惨な死亡災害が後を絶ちません。

対策―「悪天候」では作業を中止せよ

大雨などの悪天候では、作業中止が求められますが、時に、あらゆる事情で中止の判断が困難な場合があります。
過去の災害事例などを基に、“判断”について話し合い、イザという時の判断力を鍛えておきましょう。国土交通省「土木工事安全施工技術指針」などを基に、緊急連絡体制の確立、気象情報の収集と対応、大雨、強風、雪、雷、地震及び津波等に対する適切な措置を講じなければなりません。

高木 元也 (たかぎ もとや)
独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 安全研究領域特任研究員 博士(工学)
名古屋工業大学卒。総合建設会社にて施工管理(本四架橋、シンガポール地下鉄等)等を経て現職。現在、建設業労働災害防止協会「建設業における高年齢就労者の労働災害防止対策のあり方検討委員会」委員長等就任。
[主な著作等]NHKクローズアップ現代+(あなたはいつまで働きますか?~多発するシニアの労災他)、小冊子「現場のみんなで取り組む外国人労働者の災害対策・安全教育」(清文社)他。

 

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