経営者のためのわかりやすい会計

経営者のためのわかりやすい会計
2024年12月・2025年1月号 No.564

損益分岐点

 3.損益分岐点の算定方法

以下、具体的な数値をもとに、損益分岐点を算定してみます。

A社の現状は、ケース1であるとします。この費用70について固定費と変動費に大別してみたところ、固定費が10、変動費が60であることが判明しました(ケース1’)。

A社の現状においては、売上に対する変動費の割合(変動費率)は60%です。また、変動費と限界利益は表裏の関係であるため、売上に対する限界利益の割合(限界利益率)は40%になります。

損益分岐点は利益も損失も発生しない点ですので、利益が0となっている状況であり、A社の場合には限界利益が10となっているはずです(ケース2)。

以上を踏まえると、A社の損益分岐点は25(=10÷0.4)であることが計算できます。

 4.安全余裕率

実際の売上高が、損益分岐点からどれくらい離れているかを示す比率が安全余裕率であり、次の算式で計算されます。

安全余裕率が高ければ高いほど、その企業の経営状況は安全であることを意味し、赤字に転落するリスクも低くなります。

一般的には、10%~20%で平均的、20%以上で安全であると判断されます。

 5.損益分岐点分析の留意事項
  • ア 損益分岐点分析における(最終)利益としては、営業利益を用いる場合が一般的です。
  • イ 固定費と変動費の分解は、できるだけ精緻に行う方が望ましいことは言うまでもありません。
    また、固定費と変動費の中間に位置するような費用(準固定費や準変動費)も実際には存在します。
    しかし、企業経営に活かしていくという管理会計の本質的な役割を踏まえると、まずは簡易な方法でも行ってみるという姿勢が重要です。
  • ウ 以前の経営事項審査においては、Y(経営状況)において損益分岐点を用いた比率が審査に用いられていました。その際の最終利益は営業利益ではなく経常利益が利用されており、かつ、固定費と変動費の分解に当たっては、販売費及び一般管理費と支払利息を固定費、その他の費用を変動費とみなしていました。この簡便的な分解方法は、現在でも大いに参考になると考えられます。

 

 

おわりに

建設業は単品生産のため損益分岐点がなじまないと、過去に言われることもありました。しかし、経営の安全余裕度を見るためには、損益分岐点分析が有効であることは疑いようがありません。
基本的な内容を理解したうえで、工事の種類別に分類してみるなどの工夫を加えることにより、経営にとって有益な情報が得られることと思います。

 

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