経営者のためのわかりやすい会計
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2024年10月号 No.562
短期支払能力
はじめに
今回は、企業の短期的な支払能力について見ていきます。この短期支払能力は、企業財務の流動性とも言われ、貸借対照表における流動資産および流動負債のバランスとして表されます。
1.発生主義
会計は、基本的に「発生主義」に基づいています。収益や費用について、発生という事実に基づき認識していく考え方であり、具体的には何らかの義務や権利が生じた時点で会計処理が行われます。このため、収益・費用の発生により行われた会計処理と、これらに関係する実際の現預金の入出金とには時差が生ずることが多くなります。
また、会計では取得した資産に実際に投下した資金をその使用に応じて費用として期間配分したり(減価償却)、将来発生する可能性の高い費用に備えて早めに費用を計上する(引当金)処理なども行われます。
以上のような原因で、収益と費用の差額である利益が、現預金などの貨幣的資産に裏付けられたものになるとは限りません。将来的な入出金を予測し、その計画を立案する資金繰りが重要となり、これを怠ると損益計算書の上では利益が計上されていても、企業が破綻してしまうことがあります。いわゆる黒字倒産と言われる状況です。
2.企業の流動性
上記1で述べたように、企業経営において将来の資金繰り計画は重要な意味を持ちます。一方、喫緊の支払いなどに備えて強固な財務体質としておくことも必要です。
企業財務の流動性とは、一般的には企業の短期的な支払能力を意味します。短期的な支払能力は、支払うべき債務に対する支払手段の保有状況であり、貸借対照表における流動資産と流動負債のバランスとして分析されます。
この流動性を分析する代表的な比率が「流動比率」です。