FOCUS

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2019年12・2020年1月号 No.514

「わかった!」と自信を積み重ねて育みたいのは、 わからないことにも臆せずチャレンジする心

吉野川の雄大な流れ、北には讃岐山脈、南には四国山脈を望む風光明媚な徳島県西部、美馬郡つるぎ町。この地で徳島県立つるぎ高等学校は、「人づくり、ものづくり、まちづくり」をコンセプトに、地域社会の発展に貢献する専門的な学びを実践。一方で徳島トップスポーツ校育成事業の認定を受けるなど、部活動も盛んです。部活動にまい進しつつ、資格取得も積極的な同校の指導方針とは?その極意を平田元美先生に伺いました。

生徒のやる気の基本は、「簡単」「わかる」の積み重ね

昭和31年に開校した美馬商業高等学校を前進とする同校。昭和33年には工業科の併設、昭和42年には「貞光工業高等学校」と「美馬商業高等学校」の分離独立などの歴史を刻んできました。平成25年には少子化の影響により両校は再編統合。平成26年度、徳島県では初めてとなる、工業科と商業科を併設した「つるぎ高等学校」として開校されました。

地域社会の発展に貢献する専門高校。工業と商業を併設するメリットを活かしながら、オンリーワン教育を創造することを目指している

■ ■ 生徒が授業に興味をもつよう、どのような工夫をしていますか?

最初に教科書を渡すときに必ず、「これは高校生用の教科書なのだから、みんなに解けない問題はない」と伝えるようにしています。なかには、やる前から「構造計算は難しいから自分にはできない」と決めつけている生徒もいます。それでは前に進むことはできません。私はなにより、生徒が「簡単だった!」といえることが大切だと思っています。「自分はできる!」と思えることで、次のステップにいくことができるからです。まず、基礎や基本の徹底からはじめます。説明をしたら類似問題や演習問題を解き、「わかった」という気持ちを積み上げていくよう心掛けています。早く問題が解けた生徒には、困っている生徒に教えるよう促すのですが、生徒同士で教え合うと、「説明がわかりにくい!」など教わる側も容赦がありません。わかるように説明するためにはどうすればいいか、生徒は自分でしっかり考えています。誰かに何かを説明するのはとても難しいことです。しかし、考えて伝えることの積み重ねは、たとえば就職試験の際など人前で自分自身を説明しなければならない局面で役に立つと思っています。教え合いの様子を見ていると、生徒たちの変化や成長を目の当たりにすることが多く、とてもうれしく感じますね。

■ ■ 建設業への興味喚起は、どのようにされていますか?

授業では動画を活用しています。たとえば教科書で見るだけではわかりにくい土質試験。インターネットにアップされている動画を見ると、機材のサイズ感もつかみやすい。そのほか測量のコツなども、動画から学ぶことは多いです。動画は授業の前に検索エンジンなどを利用してコツコツ探しているので、生徒たちに参考になる動画がパッケージになった資料集などがあるといいなと思います。

建設業協会の方に主催していただいている現場見学会も、生徒たちが建設業に興味を抱く絶好のチャンスです。トンネル工事や山の法面工事など、県内の建築と土木の現場を4つほどバスツアーで巡っています。学校では小さな重機しか見ることはできませんが、実際の現場で大きな重機をみて「これを動かしたい!」という生徒もいます。また、現場で働く先輩方に教科書には載っていないことや、自分たちの仕事が地域の方に感謝された話などを伺い、建設業で働くことに対し気持ちが大きく動く生徒も少なくありません。

6月に行われた「ものづくり大会 徳島県大会」では、今年初めて念願の優勝!部活動と掛け持ちしながらも、授業を活用しながらチームワークと技術を磨いた

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