FOCUS

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2026年5月号 No 578

ゼネコンや行政での経験を糧に、次世代を担う技術者を“生きた教材”で育む!

三つの視点が織りなす
独自の教育

これまでの山本先生の歩みからは、土木という仕事の多面性を見ることができる。ゼネコン時代には、国内の大規模プロジェクトのほか、インドネシア初の地下鉄建設プロジェクトなどに携わり、その後は地元の役場で行政職としてインフラ整備の舵取りを担ってきた。

「ゼネコン、行政、そして教育。異なる立場を経験してきたからこそ、多角的な視点で生徒たちに伝えられる学びがあると考えています。たとえば、施工管理の一日の流れや、発注者側が何を重視しているかといった実務の裏側です。また、ときには異国の地で現地の言葉も分からない状態からスタートし、ジェスチャーを交えながら巨大な構造物を造り上げる経験もしてきました。そうした過程で得た実感は、自分だからこそ届けられる財産だと思っています。教科書にある知識だけでなく、現場の最前線で何が起きているのかを具体的に提示することを大切にしています」。

授業では、自らが撮影した現場写真を多用し、スケール感を肌で感じてもらう工夫を凝らす。

「最初は難しい顔をしていた生徒たちが、説明を重ねるうちにパッと表情が明るくなり、大きくうなずく姿を見せてくれる瞬間があります。そうした反応を見たとき、自分の経験が次世代に伝わったと実感し、教員としてのやりがいを強く感じます」。

困難を乗り越える力と
感謝の心

行政職時代には、宮崎県に甚大な被害をもたらした2022年の台風災害対応という極限の現場にも身を置いていた山本先生。土砂崩れや河川の氾濫によって寸断された道路を前に、行政の技術職として全身全霊を傾けて対応した。災害復旧の現場で見たのは、人々の日常を取り戻すための闘い。そのリアリティ溢れる体験談は、生徒たちが建設業という仕事の社会的価値を再認識する重みを持っている。

「被害を受けた地域を一日も早く復旧させるため、寝る間も惜しんで図面作成や申請業務に没頭しました。過酷な日々でしたが、地域の生活を守るという使命感だけで動いていた経験は、私の大きな糧にもなっています。生徒たちにも、土木という仕事が人々の命と暮らしを守るエッセンシャルワークであることを、折に触れて伝えています」。

そうした“想い”を大切にする姿勢は、顧問を務めるバレーボール部の指導にも通じている。

「技術以前に、挨拶と感謝の心を大切にするよう指導しています。親や周囲の支えがあってプレーできることを忘れず、礼儀を尽くせる人間になってほしい。もちろん、工業高校生として資格取得という目標も疎かにはさせません。放課後には教員全員で手分けして、資格試験対策の課外授業を実施しています。測量士補などの資格に挑む生徒たちの背中を、学科全体で支えること。それが教員の役目だと思っています」。

業界の未来を見据えた教育のアップデートにも意欲的だ。

「ICT施工の現場見学などを通じて、最先端のものづくりを肌で感じてもらいたいです。企業側の皆様には、ぜひ引き続きインターンシップなどの機会を通じて、生徒たちに広い世界を見せていただければと願っています」。

母校で学ぶ後輩たちが、宮崎の、そして世界のインフラを支える誇り高き技術者へと成長していくこと。それが先生にとっての最大の願いだ。これから社会へ羽ばたく生徒たちには、“翔け(はばたけ)”というメッセージを贈った。

「高校での学びを翼にして、自信を持って広い世界へ飛び出していってほしい。そしていつか、成長した姿でこの地元を支える主役になってくれることを期待しています」。

 


土木科の実習棟で行われる土質試験や水理の実習では、生徒たち自身が手を動かし、その目で観察しながら、計算式の向こう側にある物理的な現象を体感している。「教室での座学から解放されるところもあって(笑)、実習中の生徒たちは本当に生き生きとしています。こうした学びの積み重ねが、社会を支える主役となる彼らの底力として役立ってくれたらと思います」。

 


無人化施工の現場やICT施工を多く取り入れた現場見学などを中心に、業界の最先端技術に触れる機会を積極的に設けている土木科。「生徒一人ひとりのICTへの関心も深くなっています。学校敷地内での飛行規制などもあり簡単ではありませんが、今後はドローン操作なども実習に組み込んでいきたいです」と山本先生も意欲を燃やす。

 

天翔大橋

山本先生が「ぜひ見てほしい」と挙げるのは、五ヶ瀬川の深い峡谷に架かる天翔大橋。鳥が翼を広げて羽ばたいているような造形と、時代の架け橋になることを願って名付けられたこの橋は、コンクリートアーチ橋として日本最大級のスケールを誇り、水面からの高さは143mにも達します。「この橋の完成によって地域の暮らしは劇的に改善されました。構造の美しさはもちろん、土木が“人々の生活を繋ぐもの”であることを象徴する橋です」。

 

 

宮崎県立延岡工業高等学校

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