FOCUS
建築を入口に、社会とつながる学び。活躍するための力を育む、鶴岡工業高校の取り組み。
地域とつながる
実践が育む学び
建築科の実践的な学びは、課題研究などを通じて地域の中へ届けられている。
「校外での取り組みとして、商店街に製作物を提供したり、課題研究の一環として介護施設や養護施設などへ伺い、椅子や台車などを製作・提供するといったことも実施しています」。
こうした取り組みは、成果を外に示すだけでなく、“誰のためにつくるのか”を意識する学びにもなり、使い方を想像して形に落とし込む過程そのものが実践的な訓練となっている。
一方、学びを支える環境も更新されつつある。2021年以降、文部科学省の「スマート専門高校」事業による産業教育設備の拡充により、また公益財団法人山形県建設技術センターの寄贈を受け、新たな設備が導入された。
「CNC加工機や3Dスキャナー、レーザー加工機など、新たに導入されていく機器によりどういったことが可能になり、生徒にどのような学びをもたらすことができるのか、自分たち教員側もしっかりとした知識を持って、生徒たちに教えていければと思っています」。
地域とつながるものづくり、更新される学習環境。これらは別々の取り組みではなく、実践の質を高めるための一続きの学びとして組み立てられている。
母校で指導する
教員5年目の視点
阿部先生が教職を意識したきっかけは高校2年生の頃だった。
「当時の担任の先生と所属していたソフトテニス部の顧問の先生、お二人から教職を勧めていただいたことがきっかけでした。将来は設計の分野に進もうかなと漠然と考えていたのですが、“先生になってこの学校に戻ってこないか”という先生方の言葉が心に残っていて、教職に就くという選択肢もあるな、と」。
初任校は母校でもある鶴岡工業高校。教員として大切にしている姿勢を問うと、その答えは明快だ。
「何事にも一生懸命に取り組める姿勢を大切にしています。その中でも意識しているのは、生徒一人ひとりに合った指導です。文章が苦手な生徒や数学の計算が苦手な生徒など、個性も様々。それぞれの苦手分野を克服しながら、得意分野を伸ばしてあげられるよう図っています。また、あえて事細かく指導する場面と、大まかな指導のみを行って生徒自身で判断させる場面と、各々に適した伝え方を大切にしています」。
授業や実習においては、生徒との対話を通じて双方向の学びをつくることを重視する。
「協働学習や班別活動を入れて、生徒たちが会話しながら進められるようにしています。教員と生徒という立場もありますが、まずは“人と人”として、同じ目線で話すことが大事だと思っています」。
阿部先生が生徒に贈るのは、“応援される人へ”というメッセージだ。
「生徒には常々、周りに応援される人になってほしいと思っています。人と関わる際に、誰かに応援してもらえるというのは本当にありがたいこと。ときにはそれが重く感じることもあるかもしれませんが、それすらも担っていける人になってくれたら嬉しいですね。普段の生活においても、部活動においてもこうした意識を持っていてほしいです」。
生徒の成長を促すためには、教員自身も学び続ける存在でありたいと語る阿部先生。
「今後も更新されていく先進的な機器や技術への対応、社会に求められるコミュニケーション能力の育成など、取り組むべき課題に終わりはありません。AIやロボットが常識となっていく社会においても生徒が活躍していけるよう、私たちも常に学びながら教えていければと思っています」。
生徒と向き合い、信頼を積み重ね、仲間とともに仕事を前に進めていく──。“応援される人へ”というメッセージは、阿部先生自身の背中を押し続けている言葉でもある。

地元の中学校への手作り木製ベンチの寄贈や、卒業制作を通じた介護施設や養護施設への椅子・台車などの木工品の提供など、学びを地域貢献へと結びつける取り組みも積極的に実施。これらは学習成果の披露であると同時に、自分たちを育んでくれた社会への感謝を形にする実践の場でもある。「技術が誰かの役に立つ実感を得られる貴重な経験。相手の喜ぶ顔を見ると、生徒の表情も一段と明るくなりますね」。

精密加工や複雑なデザインを可能にするCNC加工機などを導入。設計と加工がつながる入口が増えた。「従来よりもすばやく正確に、かつ、今までなら難しかったデザイン性の高い加工なども可能になったことで、生徒も楽しみながら木工に関われています。こうした機器をよりよく生徒に体験させられるよう、私たち教員側もしっかりと知識を身につけていく必要があります」と阿部先生。
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旧風間家住宅丙申堂
庄内藩の御用商人として栄えた風間家の住宅で、国の重要文化財にも指定されている丙申堂。座敷や茶の間など部屋数19室、計180畳の和室、広大な板の間や大黒柱が当時のままに残ります。「高校生の頃、先生から地元の建築物を見てくるように言われて足を運びました。“こんな建物があるんだ!”と、すごく魅力的に感じたのを覚えています」。その言葉どおり、庄内の暮らしと商いを映す一棟です。 |


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