FOCUS

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2025年11月号 No 573

“建築って楽しい!”と感じる心を原動力に!地域とともに育む“住”の未来を担う人材たち。

“今の建築”を
知ってもらうための取り組み

「体験入学や公開授業は、中学生やその保護者たちに“今の建築”を知ってもらえる貴重な機会です」。

参加者の中には、建築科でどういった学びや取り組みが行われているかを知らない方も多いと話す関先生。

「かつての建設業界といえばいわゆる“3K”のネガティブなイメージが強かったのですが、今は職場環境や設備面、給与面も整っており、“以前とは違う”ということを参加者の皆様にもお伝えしています。また、多くの方が“建築=大工さん”と思い込んでいるのですが、実際はほとんどの卒業生が施工管理の道に進みます。そうした実情も伝えることで、建築科に進む生徒が一人でも多くなればと思っています」。

参加した中学生や保護者が驚くのは、模型製作や設計演習といった実習の多さだ。

「“こんなに製作するんだ!”と驚かれることが多いですね。体験入学においても、手を動かしながら考える実習を通じて、ものづくりの楽しさと奥深さを伝えています」。

 

成長を続ける
“謙虚な負けず嫌い”であれ!

関先生が建築と出会った原点は、幼い頃に見た父親の背中だった。

「父が建築士だったので、幼い頃からトラックに乗せられて現場を見たり、どういった工事なのかを聞いたりするなど、建築自体が身近な存在でした。自然と“建築って楽しい”という感覚が育まれていましたね」。

教員になるまでに数年を要したが、他県や長野県の講師勤務を経て、教員としてのキャリアは33年を超える。

「教える立場になったばかりの頃は、建築科に女性がほとんどいない状態でした。不安はなかったのですが、思うようにいかないことも多く、挫折の連続でしたね。建築のことでわからないことがあると、公衆電話から父に相談していたことを思い出します。そうした家族のサポートをはじめ、周りの先生、そして生徒たちにも支えられたことが、教員を続けてこられた原動力だと感じています」。

また、教員としての自信をつけるために、働きながらも様々な資格取得にチャレンジ。現在も新たな資格取得に向けて自主的に学習を進めている。

「資格は一生の財産になるとともに、確かなカタチとして残るもの。生徒には“チャンスがあるうちに早く取ってほしい”と伝えています。私の挑戦する姿を見せることで刺激になればうれしいですし、逆に私自身も生徒たちに刺激を受けて、勉強のモチベーションを高めています」。

教員生活の中で印象に残る思い出を尋ねると、文化祭でのアーチづくりや、長野県学生卒業設計コンクールでの入賞など、生徒とのエピソードが次々とあふれてきた。その根底にあるのは、教え子たちに建築の楽しさを感じてほしいという想いだ。

「“建設業界で働きたい”という生徒が少ない時期もあったのですが、近年は業界全体が働きやすい職場に変化していることもあり、夢をもって取り組む生徒も増えています。目標に邁進する生徒たちには、建築の楽しさを心から感じてほしいですね。また、変化する時代にあっても成長していくために“謙虚な負けず嫌い”でもあってほしいと思います。素直に行動できる人は、ぐんと伸びていきます」。

生徒には“出会えた縁を大切に”とエールを送る。

「人生の中では、必要なときに必要な人に出会えるもの。私自身も様々な縁に恵まれ、支えられてきました。そのときに出会えた縁を大切に、高校生活やその後の人生を過ごしてほしいと思っています」。

 


滋野児童館の建設現場や松本市の競技場建設現場、須坂市のホテル建設現場など、様々な現場を訪れて刺激を受ける生徒たち。プロの仕事を間近に見ることが、自らの進路を考える大きなきっかけとなっている。「建設業界は、以前に比べてより夢のある職場へと変化していると感じています。企業側も人材確保に向けて働きやすい環境づくりに努力されているので、安心して生徒を送り出せるようになりました」と関先生。

 


毎年夏休みには、地域の中学生を対象に体験入学を実施。建築科ではミニハウスという小さな木造の家を組み立てる体験や、製図の作品展示、パソコンによるCAD体験などを行い、在校生が案内役・指導役として活躍する。「実施後のアンケートには“先輩たちが優しかった”という声も寄せられ、生徒にとっても中学生にとってもよい学びになっていると実感できます」。

 

安楽寺 八角三重塔

創建は1290年代とされる安楽寺八角三重塔。禅宗様という形式で建てられ、華やかな木組みや巧みな意匠を特長とするこの塔は、日本で唯一現存する木造八角三重塔であり、長野県初の国宝にも指定されています。「小さな頃から何度も訪れた場所で、遠方から来られるお客様にもご紹介している建築物です。世界に誇る貴重な文化財として、上田にお越しの際はぜひ目にしていただきたいです」。

 

 

長野県上田千曲高等学校

〒386-8585 長野県上田市中之条626
WEB:https://www.nagano-c.ed.jp/chikuma/

 

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