FOCUS
家づくりから人づくりへ。地域とつながり、建築を通して育む確かな力!
日本三景の一つ・天橋立で知られる京都府宮津市に、2020年に開校した京都府立宮津天橋高等学校。宮津高等学校と加悦谷高等学校の統合により誕生した同校では、伝統あるアーチ製作や地域と連携した課題研究など、実践的な学びを通してものづくりの力を育んでいます。その建築科で学科長を務めるのが、同校の卒業生でもある谷川勇樹先生。民間企業での設計経験などを活かし、建築の魅力を伝える教育に力を注ぐ谷川先生に、建築科の取り組みや生徒への想いを伺いました。
地域と生徒をつなぐ
実践の場づくり
京都府立高校で唯一となる建築科を設置している同校。定員25名の少数精鋭とし、生徒一人ひとりと密に向き合う学びを展開している。
「建築科といっても、入学する生徒すべてが建築志望というわけではなく、保育や福祉、看護の道に進む生徒もいます。しかし、ものづくりを通じて学ぶことは、どのような進路にもつながる普遍的なもの。たとえばコミュニケーション力や協調性、責任感、計画性など、ものづくりという分野を通じて、そうした力を身につけてくれていると感じます」。
建築科の指導の中で大切にしているのは、地域や社会との接点。それにつながる取り組みの一つが、地域と協働した吉津小学校前バス待合所の製作だ。
「地域の方から“待合所が老朽化して困っている”という声が届き、本校の生徒と何かできないかと。バス会社さんとも連携して進める中で、“せっかく小学校の前にあるのだから”ということで、小学生の意見も取り入れようとワークショップを実施しました。こどもたちが思い描くアイデアをどう形にできるか、高校生が一緒に考える──そのプロセス自体が、実社会での仕事に近いものです。意見をとりまとめながら具体的なものづくりへと展開していく経験は、生徒にとって非常に良い学びとなります」。
また、社会に出た後の活躍につながるよう、生徒の資格取得に向けたサポートにも力を注ぐ。
「資格取得に向けては、夏休みや冬休みの時間を使って補講を実施しているほか、年数回『ステップアップDAY』という土曜講習を設け、集合学習や勉強会を開いています。目標設定として京都府教育長表彰の対象資格やジュニアマイスター顕彰などを指標にし、生徒が高いモチベーションで勉強できるよう図っています」。
生徒には、谷川先生自身の民間企業経験を踏まえた話もあわせて伝えている。
「資格を持つことで仕事の幅が広がることや、説得力の違いといったことを、実例を交えて伝えるようにしています。生徒たちも“先生が実際に見てきた現場の話”として聞いてくれるので、納得感が違います」。