生徒の成長につながる
地域連携と体験

建設業界のリアルを体感するため、校外学習や外部連携の機会も豊富に設けている同校。関門橋や関門トンネル、山口市庁舎の大型工事現場の見学、NEXCOや国土交通省などとの連携による施設見学や現場視察は、生徒の職業観や将来のイメージを大きく広げている。

「やはり、実際に実務に携わっている方から教わるというのは、生徒にとって非常に大きな刺激になります。山口県土木建築部監理課・山口しごとセンター主催の『やまぐち建設産業魅力発見フェア』では、ドローンや足場組立などを体験でき、昨年度に実施した『カーボンニュートラルプロジェクト事業』では、プレカット工法や断熱材の製造工場などを目にすることができるなど、仕事の一端に触れたり、自分の手を動かす体験などは、進路選択においても大きな判断材料となっています」。

地域の人々に向けたアプローチにも取り組み、建設分野への興味喚起をよりいっそう図っていきたいと話す松原先生。

「地域の小学校への出前授業のほか、中学生・高校生向けとして7月に開催予定の下関市主催『しものせき未来創造jobフェア』への出展などを図っています。折り紙建築を体験できるワークショップなどを通じて、建設分野に親しみをもっていただくきっかけになればと思います」。

“教えすぎない”
考える力を育む指導へ

教員歴34年目。若手教員とともに授業をつくり、生徒と向き合う日々を送っている松原先生。生徒を指導する中で大切にしているポイントを伺った。

「誤解を恐れず言えば、“教えすぎない”こと。答えがすぐに見つかりがちな昨今だからこそ、問題が解けず悩んだり困ったりする時間や、試行錯誤を繰り返して答えにたどり着くというプロセスが重要ではないでしょうか。私たち教員の指導がきっかけとなり、生徒が自分自身で考え、学びを進めていってほしいと思います」。

教員生活を通して、記憶に残るエピソードも数多い。

「若い頃に卒業設計の指導をした生徒が、今では設計事務所や工務店の経営者として活躍していたり、市役所に勤めて地域に貢献している卒業生などもいます。中には親子2代にわたって教えたこともあり、自分でも“長くやってきたな”と実感しますね（笑）」。

生徒の成長を感じるのは、進路を目前に控えた3年生の姿に触れた瞬間だ。

「面接練習に臨む姿勢や、進学・就職に向けた態度を見ていると、“大人になったな”と、感慨深いものがあります。建築教育を取り巻く環境やICTの導入などの技術面の変化はありますが、人として大切にすべき規範意識や協調性といった基本の部分は、今も昔も変わらないものだと思っています。だからこそ生徒には、建築を通して人と協働する力、社会において必要とされるコミュニケーション力を、3年間を通してしっかりと育んでほしいです」。

建設工学科長として、教員間の連携にも心を砕く。重視しているのは“得意を伸ばすこと”だ。

「経験上、得意な分野を伸ばすことで、苦手な分野も自然と解消に向かうと考えています。先生同士でも、強みを生かして補い合える体制づくりを意識しています」。

今後はBIMや3Dプリンターなどの技術導入、フリーハンドエスキースの指導などにも積極的に取り組んでいきたいと話す松原先生。生徒に伝えたいのは、“人生を愉しむ”というメッセージだ。

「“人生を愉しむ”ことが、すべての原動力になる。建築の学びの中にこそある、夢中になれるおもしろさや喜びをぜひ見つけていってほしいです！」。

外部と連携した取り組みにも積極的な同校。建築コースの3年生を対象にした『カーボンニュートラルプロジェクト事業』では、地元工務店と連携して脱炭素社会を見据えた建築技術について学ぶ機会を得た。「下関市内の工場や現場でのプレカット工法や、普段は目にすることのできない断熱材の製造工場などを見学することができ、非常に有意義な学びとなりました」

山口県建築士会下関支部青年部による出前授業では、エスキースの指導を通じて建築の面白さに触れることができた。「1・2年生を対象に出前授業をしていただきました。2年生まではまだトレースを学んでいる段階なので、エスキースに触れるのはほぼ初めて。自分のイメージを見える形に描くというプロセスは、生徒にとって楽しく興味深い学びになったようです」

山口県立下関工科高等学校

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