FOCUS
“本物”に触れて、“未来”が動き出す。──現場とともに育てる、建築教育の今。
資格取得と成功体験が、
自信と成長の礎に
卒業後の生徒の力となる資格の取得サポートにも力を入れている同校。
「日建学院と連携し、2級建築施工管理技術検定(第一次検定)や1・2級建築士の資格取得に向けたサポートなどを実施しており、今後も継続的に取り組んでいきたいと考えています。生徒の中には前期で2級建築施工管理技術検定(第一次検定)に合格し、後期で2級土木施工管理技術検定(第一次検定)に合格する生徒もいます。ジュニアマイスター顕彰の特別表彰をいただくなど、資格取得が生徒の力となり、自信にもつながっていることを感じています。施工管理の勉強においては、本校ではパソコンやスマートフォン上で過去問題に挑戦できるアプリケーションなども活用し、自宅でも取り組むことで力をつけられるようにしています」。
令和2年より、卒業後すぐに2級建築士試験を受験することが可能になったことを受け、建築士の資格取得にも積極的だ。
「本科では、進学を見すえた『アカデミックコース』と、専門の知識・技能を学ぶ『エンジニアコース』を設けており、どちらを選択しても卒業後に2級建築士試験の受験資格を得られるようにしています。卒業後に2級建築士資格を取得した後、早期に1級建築士の資格を取得する卒業生も現れるなど、生徒が存分に力を発揮できる土台が整ってきたように感じています」。
卒業後、技能の道に進む生徒も多い同校。
「技能検定の資格も一つ取得すれば終わりではなく、“次はこの資格を取ってみたい”とチャレンジを続けていく生徒も多くいます。一つひとつの成功体験が意欲や自信を高め、新たな挑戦にもつながっていくと見ています」。
学び合い、教え合いながら、
自ら未来を切り拓く力を
ゼネコン勤務を経て、教職の道へ進んだ冨山先生。
「大学の恩師に声をかけていただいたことが教職に進むきっかけとなりました。すっかり教員生活のほうが長くなりましたが、授業の中など現場のことを折に触れて話すようにしています」。
近年は生徒と同じく技能検定にも積極的に挑戦し、建築大工2級や鉄筋組立3級を取得。資格取得を通じて培ったスキルや学びを、資格に挑戦する生徒たちに還元している。
「 “学ばない指導者は、人に教えてはいけない”という言葉を、以前にサッカー部の顧問をしていた頃に教わり、今も自分の中で意識しています。技能検定についても知識だけでなく、自身の経験として身につけておけば、授業や指導の中にもダイレクトに反映されます。今年は左官の3級、とびの3級、型枠施工の3級の技能検定取得を目標としています」。
大切にしているのは、生徒が主体的に学び、成長していける力を養うことだ。
「学習指導要領の変化もあり、教える側が一方的に知識を伝えるというやり方ではなくなっています。今は生徒1人につき1台タブレット端末を持っているので、わからないことはできる限り自分たちで調べたり、教科書の内容を自分たちでまとめさせて発表してもらうなど、主体的に学べる力を身につけられるよう図っています」。
顧問を務める建築デザイン部においても、生徒が自分たちで学び合い、成長できる環境を大切にしたいと話す。
「地域のイベントに参加してものづくり教室を開催する活動も行っていますが、1年生の頃にはなかなか喋ることができず説明もタジタジだった生徒が、3年生になると顔つきが変わり、後輩たちにお手本を見せたり、人前でも堂々と話ができるなど、成長した姿を見せてくれます。資格取得や大会出場、ジュニアマイスター取得といった経験を通して成長していく様子を見ると、すごく頑張ったんだなと感慨深くなります。また、そうした先輩たちの姿を見て後輩たちも学び、より力を伸ばしていくものと感じています」。
地域・企業との連携によって、建設業界のリアルに触れる学びを提供する同校。その最前線で教鞭をとる冨山先生の言葉の一つひとつから、生徒へのまなざしと教育への熱意が伝わってくる。
職種体験や実技講習会など、現場で活躍するプロフェッショナルの指導のもと、多くの体験を通じて学びを深める生徒たち。「現場の方に仕事に対する想いなどを伺う機会もあり、どういったところにやりがいを感じるかなど、働く方の生き方にも触れることができ、生徒自身が5年後、10年後といった将来像を描くための学びにもなっています」
冨山先生が主顧問を務める建築デザイン部。「春は5月末開催のものづくりコンテストに向けて練習に励んでいます。その後は製図コンクールやCAD検定に向けて取り組んでいるほか、年間を通して技能検定の資格取得に向けた練習なども行っています」。先輩が後輩をサポートし、お互いに学び合える環境が形成されている
津島神社 540年に創建されたといわれる歴史的な神社。織田信長や豊臣秀吉などの武将からも厚い信仰を受け、社殿の造営や寄進が行われました。正月や秋祭りなど、年間を通じて多くの祭事が行われます。「本校から約5km程度の距離にある、多くの人々に親しまれるスポットです。サッカー部の顧問を務めていたころには本校から津島神社までジョギングしていた思い出があり、今も建築デザイン部のみんなと訪れます」 |
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