FOCUS
“本物”に触れて、“未来”が動き出す。──現場とともに育てる、建築教育の今。
令和3年4月、グローバル化・デジタル化の進展に伴う産業界のニーズの変化を踏まえ、以前の“愛知県立佐織工業高等学校”から学校名を改称した“愛知県立愛西工科高等学校”。従来の“建築科”から“建築デザイン科”への科名変更も行われ、新たな学校としてスタートしました。今回は、幅広い教育活動を通じて生徒の将来に寄り添う取り組みを展開している同科において、14年にわたり指導を続ける冨山正士先生に、日々の実践とその背景にある想いを伺いました。
現場とつながる体験で、
建築の“リアル”を知る
卒業後に建築やものづくりの分野で幅広く活躍できる“人財”の育成を目指す建築デザイン科。「建築の面白さを感じてもらうため、企業の皆様にもご協力いただきながら授業を組み立てています。近年では、鹿島建設と協力会社の皆様との連携による『建設業セミナー』を継続的に実施し、建設業界の魅力や現在進められている大型プロジェクトなどを紹介していただいたり、それぞれの仕事内容や魅力を語っていただくなどして、生徒が建設業界のリアルに触れる機会を設けています。また、建設産業専門団体中部地区連合会主催の『合同体験フェア』にも参加し、様々な専門工事の職業を体験できるようにしています」。
同校では、加向建設による型枠組立、浪花組による左官、伊藤組による足場組立などの実技講習も実施。プロの技術を間近で体感しながら学ぶ環境を整えている。
「体験後に“面白かった!”と目を輝かせる様子を見ると、やはり実体験の力は大きいと感じます。また“こういう仕事もあるんだ!”と知るだけでも、生徒たちの視野は広がります。実施後のアンケートを見ても、技能や知識の習得だけでなく、生徒が自身の将来像を描く手助けにもなっていると感じます」。
企業によるセミナーや実技講習会は、冨山先生にとっても楽しみの一つだ。
「講習会などでは、かつての教え子たちが生徒に教える立場として訪れることがあります。社会人としてたくましくなった姿を見るのは、私にとっても楽しみ。“今は大きな現場で頑張っています!”といった言葉などを聞くこともあり、本当に感無量です」。
現場見学やインターンシップも、生徒が仕事のリアルに触れる貴重な機会。インターンは2年生全員が対象となり、複数の企業を体験する生徒もいる。
「インターンシップ参加をきっかけに入社を決める生徒も多く見られます。やはり直接職場を目にして、どういった仕事なのか、どういった雰囲気なのかを体験するほうが、それぞれの企業の魅力が伝わりやすいのだろうと実感しています」。