FOCUS

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2025年3月号 No.566

10年に及ぶものづくり経験を生徒に還元!建築業界・工業教育の未来につながる取り組み。

岩手県立盛岡工業高等学校建築・デザイン科 大森慎一先生

雄大な岩手山や北上川が四季折々の表情を見せる、岩手県盛岡市。この地に創立された岩手県立盛岡工業高等学校は、開校より126年の歴史を持つ全国でも屈指の伝統ある工業高校です。岩手県高校工業教育のセンタースクールとして、全日制7学科・定時制1学科を擁し、多くの技術者を育成してきた同校で教鞭をとる建築・デザイン科の大森慎一先生に、教育への想いや生徒への期待を伺いました。

資格取得を通して
身につける確かな力

“資格は社会人にとって大きな武器”と話す大森先生。建築CAD検定や2級建築施工管理技術検定(第一次検定)、建設業経理士・経理事務士検定など、特に実務につながる資格には積極的にチャレンジすることを生徒に勧めている。

「建築・デザイン科に入ってくる生徒の多くは、建築士をはじめとした将来へのビジョンがあり、資格取得に対しても高いモチベーションを持っています。しかし、実際に資格を取ろうとすると、どうしても学ぶことの多さに躊躇してしまったり、難しさやハードルの高さを感じてしまうことも事実です。そうした生徒は何かしらの成功体験を持たせてあげると、自ずと頑張っていけるもの。以前に受け持っていたクラスでは朝学習などを取り入れ、少しずつ成功体験を積み重ねながら全員での資格合格を目指し、生徒も互いに励まし合いながら頑張ることができました。社会に出ると必ず壁にぶつかるときが来ますが、資格取得に向けて懸命に努力した経験が、そうした壁を乗り越える糧にもなります」。

卒業後に就職を選ぶ生徒にとっては、どういった職種や企業に進むかは大きな悩みの一つ。就職後のミスマッチを防ぐ意味でも、同校では学校と企業が一緒になって生徒を育成するデュアルシステム(長期就業体験)を組み入れている。

「インターンシップでは3日間程度の就業体験ですが、デュアルシステムでは2ヶ月間・毎週1回という長期的なスパンで大工や設計などの就業体験が可能です。生徒にとっては企業を知る体験であり、就業先の企業にとっても本校の生徒がどういった人間なのかを見ていただく貴重な機会。双方にとってプラスになっているものと感じています」。

また、卒業後の進学を検討している生徒の受け皿にもなれるよう、他校と連携した『建築専門部』を構えている。

「従来は工業高校に入学後、推薦以外で進学するケースは限られており、進学を支援する体制も充分とは言えない面がありました。『建築専門部』はそうした状況を打破するため、建築系学科を擁する県内の高校が連携し、国公立大学などへの進学を希望する生徒に対してセミナーや講義といった形で手厚い指導・サポートを行う取り組みです。今後は本校全体でより一層手厚い支援に取り組み、実績をつくっていくことで、高校卒業後の進学を視野に入れている中学生や保護者の方々に対して工業高校の魅力をアピールしていきたいです」。

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