FOCUS
“生徒ファースト”の想いと“社会との繋がり”が育む、ものづくりの力!
資格取得を通じて
自ら学ぶ力を育む!
生徒の将来を見すえ、資格取得のサポートにも力を入れている同校。測量士補試験やトレース技能検定、建築CAD検定などに向けて、朝や放課後の時間を使った補講、個別での補習などにも取り組んでいる。
「2級建築施工管理技術検定(第一次検定)など、授業の中に試験に向けた勉強を交えていく場合もあります。本校では地元企業などを中心とした就職の道に進む生徒が多いため、本校が社会に出る前の最後の学びの場と言えます。しかし、自ら学ぶというスキルは、社会に出る前よりも、むしろ社会に出た後にこそ不可欠なもの。そのときに困らないよう、学生のうちに自ら学ぶ習慣を身につけておいてもらいたいという考えです。資格試験においてもそうした想いのもと、合格に向けたサポートに取り組んでいるところです」。
生徒が意欲を持って取り組める授業を実践し、優れた実績を上げている教員を示す福井県の制度“授業名人”にも認定されている谷先生。生徒のやる気を引き出すために、どのような点を重視しているかを伺った。
「授業におけるテクニックのようなものは、あまり意識していません。ただ、考え方のベースにあるのは“人の根本には知ろうとする欲求がある”ということ。生徒のだれもが本能的には何かを知りたい・学びたい意欲を持っていながら、これまでの学習経験や状況などが心に網をかけてしまい、自ら学ぶことができなくなっている生徒が多いように思います。そうした網を取ってあげて、気づきを与えることで、自ずと学ぶ姿勢が生まれてくるのではないでしょうか。特に工業教育や建築分野の場合、中学校までは勉強が苦手だった生徒も楽しく学べることが多々あります。生徒それぞれで得意とするところは異なるため、一人ひとりの顔を見ながら授業をするということが、私の中で大切にしているポイントです」。
工業教育のベテランとして
生徒を支える!
工業教育に携わって35年以上。教員になったのは、より多くのものを社会に残せる仕事だと感じたからだ。
「大学で学ぶうちに建築の勉強がますます楽しくなり、卒業後は就職を視野に入れていました。しかしあるとき、教員になって教え子たちを育てることで、自身が手がけるであろう建物の何十倍・何百倍もの建物が生まれると考え、教員の道へ進みました」。
前任の高校では、教頭や校長といった管理職も経験。教員として常に意識しているのは、“生徒ファースト”、そして“社会との繋がり”を重んじることだ。
「学校とは、教員と生徒の場。“生徒ファースト”の考えは当然ではあるのですが、それは単に生徒を甘やかすという意味ではなく、生徒の将来を真剣に考えた教育を行うということです。ときには厳しく、ときには励ましながら、教員一体で温かく育んでいくことが重要だと感じています。また、管理職を務めてきたことで、学校外の地域の方々・企業の皆様との関わりといった“社会との繋がり”の大切さも見えてきました。事業委員を務めさせていただいている福井県建築士会も様々な方と繋がるきっかけになっており、建築士会の方を通じて生徒がインターンシップに参加させていただいたり、生徒に合った地元企業をご紹介いただいたりと、繋がりに支えられている部分が非常に大きく、感謝の一言につきます」。
役職定年を迎え、令和6年4月より同校で教鞭をとる中、授業を行う楽しさを実感している谷先生。その想いは、生徒の未来に向けられている。
「就職にせよ進学にせよ、生徒それぞれが自身に合った選択と決断をしてくれるのが一番です。願わくは、学んできたことを存分に活かし、社会に還元してくれたらと思います。本校で勉強して、社会に出て、いずれは父親や母親、先輩や上司となって、新しい世代を育ててほしいですね。人の世話ができるようになることが、人として100点のことだと思っています。その手段として、建築の知識が役立てば、それに勝る喜びはありません!」
3級技能検定(鉄筋施工・左官・建築大工)に向けて、熟練の技能を有するものづくりマイスターを招聘し、指導を受ける取り組みも実施。プロフェッショナルによる本物の技術を目にしながら、ときにはアドバイスを受け、難しい工程などにもチャレンジしながら体験的な学びを深めている
令和5年度の課題研究として学科横断で取り組んだのが、敦賀を全国にPRする『北陸新幹線敦賀開業みんなで応援プロジェクト』事業の一環となるインスタレーションの製作。港町・敦賀をイメージした波模様や新幹線車両を青や金色などの光で表現した作品が、敦賀市役所のホールを美しく彩った
道のオアシス 谷先生が生まれ育った福井県池田町の国道417号沿いに2024年4月にオープンした、日本の原風景を感じられる観光交流施設。「すぐそばを流れる足羽川のせせらぎを感じながら座ってお茶をしたり、川沿いの遊歩道をのんびり散策できたりと、すごく気持ちの良い場所。建物(センターハウス)の形状など、設計視点で見ても面白いスポットです」 |
福井県立敦賀工業高等学校
〒914-0035 福井県敦賀市山泉13-1
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