FOCUS

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2022年10月 No.542

伝統ある高校で取り組む、先進の機器を用いた学び。現場経験を活かし、未来の建設業の担い手を育てる!

教員や地域が一体となり
未来の担い手を育成

新潟県建設業協会や民間企業からもさまざま支援が行われており、同校の生徒に寄せる期待の高さがうかがえる。

「新潟県建設業協会さまには非常にお世話になっており、“担い手育成事業”という取り組みのもと、バイパスの現場見学会や、発注者の仕事を学ぶグループディスカッションなども手厚くサポートしていただいています。地元の企業さまからもICT充実のためのパソコンなど物品の支援もいただいており、本当にありがたいです。県職員の方をはじめ、北陸地方整備局や高田河川国道事務所さまなども一緒になって指導してくださり、“仕事ってこういうものなんだ”と、生徒にとって大きな学びになっています。私が在学していた就職氷河期と比べて、今は技術者不足、人材難の時代。数多くの選択肢の中から、将来の道をぎりぎりまで悩む生徒もたくさんいます。そうした中で生徒自身が“担い手”として活躍するイメージを育める現場見学会やグループディスカッションは貴重な機会。生徒の中にも、担い手育成事業を通して接することができた会社に就職したいという子が出てきました。やはり仕事を知ること、現場に関わる方と接することは、大きな刺激になっているようです」

機材やソフトが進化し、3次元の製図なども可能に。
「実際の現場では3次元が主流になってきたので、来年はより発展的に授業を進めていく考え」と話す岩下先生。
だが、常に心がけているのは“生徒は初心者”であるということ。「1年生で基礎を学び、本格的に学ぶのは2年生になってから。
あくまで最初は初心者であることを忘れず、できる限り噛み砕きながら教えることを大切にしています」

大きな楽しさとやりがい
現場を知るからこそ伝えたい想い

同校卒業後は大学を経て建設会社に勤め、現場監督として北陸新幹線の構築や新潟駅高架化工事などにも携わってきた岩下先生。忙しくとも楽しくやりがいのある仕事と感じていたそうだが、そこから教員への道を歩んだのは、ある想いがあったからだ。

「もともとは本校で学んだことをより深めたいと考えて大学へ進んだのですが、2011年の東日本大震災を経て、生まれ育った故郷の街づくりや維持管理に携わりたいと、地元を拠点とする建設会社に入社しました。現場監督も経験し、ベテランの職人さんたちから現場での知識や施工方法なども多く学ぶなど充実した毎日を過ごしていたのですが、その一方で、せっかく入職した部下や若手たちが早期に辞めてしまう姿も多く見てきました。まだ働き方へのケアが不十分な頃でもありましたが、ものづくりの達成感や楽しさを覚える前に離職する人びとがいるのは、本当に残念で…。高校や大学でのキャリア教育や、自身の現場経験を活かす道もあるのかな、と考えたことが、現在教員として働く動機になっています。私自身は“いいものをつくりたい”という気持ちをもって年上も年下も分け隔てなく意見を言い合える現場の環境がすごく楽しくて、今でも現場を目にすると“ちょっと戻ってみようかな”という気持ちもわいてくるほど(笑)。そんな楽しさややりがいを、今の生徒たちにも感じてほしいですね」

“損して得とれ”という言葉は、そんな現場監督を経験した1年目に現場所長からかけられたひと言だ。

「下請けの皆さんとの付き合い方について表された言葉でした。その時はあまり理解できなかったのですが、たまたま最初の現場で付き合いのあった職人さんが、別の現場がピンチの際に “あのとき所長さんにお世話になったから”という気持ちで作業に駆けつけてくれたことがありました。それを見て、目先の利益だけでなく将来も見すえて、目の前の人や物事に丁寧に向き合う大切さを学びました。生徒に対しても、課題などを面倒に感じることもあるだろうけど、5年、10年先の“得”を見すえて学んでいってほしいなと思います」

かつて建設業の担い手として活躍していた岩下先生。その教えを受けて、さらに多くの未来の担い手が生まれていくことだろう。

「教科書に載っていない“プラスα”も教えていきたい」と語る岩下先生。
基本は教科書に沿って教えながらも、なぜこうした知識が必要なのか、なぜこうした取り組みが生まれたのか、
どういった様子で現場が進められているかなど一歩踏み込んで伝えることで、土木に対する理解や興味を高めている

 

謙信公大橋

岩下先生が選んだのは、上越市の関川に架かる謙信公大橋。「私がこどもの頃に架設された橋です。当時はこれが土木の仕事ということすら分からなかったのですが、この橋が開通したことで対岸への移動が格段にスムーズになりました。橋が生まれていく過程もはじめて目にすることができ、非常に印象に残っています」

 

 

新潟県立上越総合技術高等学校

〒943-8503 新潟県上越市本城町3番1号
WEB: http://www.jouetsusougi-h.nein.ed.jp/

 

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