特集
建設産業人材確保・育成推進協議会の取組
産官学をつなぐ「場」としての人材協の役割
谷脇:人材協についても伺いたいと思います。人材協――正式には建設産業人材確保・育成推進協議会は、基金が事務局を務め、国土交通省をはじめ関係行政機関、そして多くの建設産業団体の皆様に参加いただいている組織です。教育業界、建設産業界、行政機関の相互理解を深める「場」として、1993年の設置以来、30年以上にわたり活動を続けてきました。先生は1999年から運営委員会委員として、2013年からは委員長として長くご尽力いただきました。
古阪:人材協の良さは、産・官・学が同じテーブルにつくことですね。若年者の送り出し手である教育側、受け入れ側の産業界、そして制度を担う行政。それぞれに言い分や課題認識があって、単独では噛み合いにくい。だからこそ、つなぎ役が必要になる。人材協は、建設企業、職業訓練校、建設系高等学校等との接点も持ち、産・官・学のつなぎ役を果たしてきたと思います。
谷脇:人材協の取組として、入職促進だけでなく、入職後の育成・活用・定着までを視野に入れた活動を続けてきました。中でも、建設産業を知ってもらうための大きな取組として「作文コンクール」や、近年では「建設人材育成優良企業表彰」などがあります。これらを担ってきていただいた中での印象や効果はいかがでしょうか?
古阪:作文コンクールは、作文を書く本人にとって非常に大きな学びとなることに加えて、作文を目にした人が気持ちを励まされるなど、意義のある取組になっています。私は「褒める場」を意識的に作ることが大切だと思っていて、作文コンクールはまさにそれを体現しているものです。日本では個人よりも、その人が属している組織を褒めることになりがちです。しかし、個人個人を褒める場を作ることが、業界全体のモチベーションアップにもつながります。教育的な意味でも重要ですね。
谷脇:人材協が主催する作文コンクールは、建設産業の役割や重要性について理解を深めることを目的に、建設産業に従事する方々や高校生を対象として毎年実施しています。現場の声や、学びの声が、文章として届く点に価値があると感じます。先生は2013年から優秀作選考委員としても携わっていただき、審査や表彰式にもご列席いただいてきました。
古阪:若い人の文章には、こちらが学ぶことも多い。だからこそ、コンクールを「単なるイベント」で終わらせず、業界の学びの循環にしていけるといいですね。
谷脇:また、建設人材育成優良企業表彰は、2022年度に創設され、建設産業における人材育成に積極的に取り組む企業を称えるものです。先生には創設時から選考委員として尽力いただいています。
古阪:企業表彰も「褒める場」の一つです。人材育成は各社が苦労しながら取り組んでいるのに、外からは見えにくい。取組を可視化し、評価し、共有することで、次の実践が生まれる土壌ができる。そういう意味で、続けるほど効いてくる取組だと思います。
若者の入職を見つめた「面白さ」の可視化へ
谷脇:第三者の視点から見て、基金や国交省について、変えた方がよい点や工夫すべき点はありますか?
古阪:やはり若手の入職の減少、担い手不足の問題は大きな課題です。現場の仕事がいかに面白いか、ということを可視化するのが大切。ところが、入職前教育が不足している面もあります。学校教育の中で、建設産業の仕事の面白さや、社会を支える意義が十分に伝わっていない。実践的教育の整備が必要だと感じています。
谷脇:『建設業しんこう』でも毎号、工業高校や企業に伺い、取組を取材しています。まさに、現場や教育の実践を伝え続けることも大切だということでしょうか?
古阪:ぜひ継続してほしいですね。現場は変化しているし、教育現場でも工夫が積み重なっている。そういう「今」を伝え続けることが、可視化につながります。
谷脇:海外の事例として、アメリカでは労働組合(ユニオン)が組合員の技術向上や安全教育、リーダー育成を目的とした訓練施設を全米各地に保有していて、建設産業に入りたい人が現場で仕事ができるように教えてくれる体制があります。日本でも、入職前後に学べる訓練施設のような仕組みはもっと必要でしょうか?
古阪:必要だと思います。日本は、いまだに「親方に怒られながら技能を身につける」といった旧態依然とした徒弟制度に依存している面があります。若手を受け入れたくても受け入れにくい事業者もいるので、そうした事業者を含めて、仕組みを再設計していく必要があると感じます。
谷脇:社会保険の徹底などで処遇改善は進みましたが、重層構造や安値受注が賃金の足かせとなっている面もあります。一方で、少子化が進む現実を見ると、国内だけでなく外国人材も必要不可欠な時代に入っています。外国人材を活かしていく上でのポイントは、どういったところにあるとお考えですか?
古阪:日本の場合、技能の種類が50超まで細分化されています。一方、海外では、例えば東南アジアは多くても8類型ほど。そうした差異を見つめると、より円滑な運用を可能にしていくために、日本側も今後の技能体系を考えていく必要があるかもしれません。現場の実態に合わせて整理していく視点が要るでしょうね。
「おもしろく生きろ」という言葉を胸に
谷脇:『建設業しんこう』は、多くの中小建設会社の経営者の皆様にも読まれています。先生から、何かアドバイスはありますか?
古阪:自社が何を強みにしているか、というのはもちろんですが、それと同時に、自社がどういった人たちから応援されているのか、どういったネットワークをつなげていけるかを念頭に置くことが大切だと思います。誰が協力者になってくれるのか。それを意識しておくと、変化の時代に耐える力になる。
谷脇:最後に、工業高校生をはじめとした若者、そして建設産業に向き合う読者の方々に向けて、メッセージをお願いできますか?
古阪:立場によって仕事への姿勢や社会の見方は様々だと思いますが、私自身、親から言われたのは「おもしろく生きろ」ということでした。その言葉もあって、若い頃から面白いことを自ら選んで取り組み、人から依頼されたことも積極的にやってきました。面白いと思ったらどんどんやる、という姿勢は大切だと思います。それから、今後増えていくであろう外国人材との協調・協働は、意識して取り組んだ方がいいでしょうね。また、今まさに奮闘されている方も、ベテランの方も、年齢に拘らず能力を発揮してほしいと思います。
谷脇:本日は非常に有意義なお話を伺うことができました。ありがとうございました。
古阪:こちらこそ、非常に良い場を設けていただきました。ありがとうございました。





