特集
今後の建設業政策のあり方

担い手不足や長時間労働など、構造的な課題を抱える建設業。近年はDX・AIなどの技術革新も進み、業界はまさに転換期を迎えています。令和7年7月に不動産・建設経済局長に就任された楠田幹人氏に、建設業の現状と今後の政策の方向性、そして「担い手3法」や「今後の建設業政策のあり方に関する勉強会」「育成就労制度」「CCUS」など最新の取り組みについて伺いました。
現在の建設業をめぐる状況と課題
谷脇:局長の想いや展望を伺える貴重な機会ということで、『建設業しんこう』の中でもこちらの対談企画は特にご好評をいただいています。本日はよろしくお願いいたします。
楠田:よろしくお願いいたします。
谷脇:局長はこのところ連続して住宅局担当審議官、不動産・建設経済局担当審議官、住宅局長を務められた後、令和7年7月1日付けで不動産・建設経済局長に就任されました。最近の建設業界についてどのような想いを感じていらっしゃいますか?
楠田:建設業は他の産業以上に将来的な担い手不足という大きな課題を抱えています。また、住宅政策においても、20年間で大工が半減する中、担い手確保は向き合わざるを得ない重要課題となってきました。DXやAIといった技術の進化によって業界自体が大きく変わる今、改めて建設業が持続可能な産業としてあり続けるための重要な時期に来ていると感じています。
発注者と受注者が立場の違いを超え、問題意識を共有して、他の産業に負けない職場づくりに取り組むことがますます大切になってきていると思います。
第三次・担い手3法の全面施行に向けて
谷脇:他産業も見すえ、非常に重要な時期に来ているということですね。担い手確保の視点での特に大きな施策として、令和6年より開始され、令和7年12月に全面的な施行となった第三次・担い手3法に関する取り組みについて伺えますでしょうか。
楠田:建設業は、社会資本を整備するだけでなく、地域経済や雇用を支え、災害対応や老朽化対策を担う「地域の守り手」です。その役割を将来にわたって果たし続けるために、国土交通省ではこれまで、若者をはじめとする担い手を確保する観点から、処遇改善と働き方改革、生産性向上を柱に据えた諸施策を粘り強く進めてきました。こうした流れをさらに前へ進めるうえで、令和6年に成立した第三次・担い手3法は大きな意味を持ちます。労働者の処遇改善を確かなものにするための「労務費の確保」、そして働き方改革のもう一段の推進や生産性向上につながる制度強化を位置づけたものです。
とりわけ重要なのは、国が適正な「労務費に関する基準」をあらかじめ示したうえで、これを著しく下回る見積りや請負契約を、下請取引も含めて禁止するという、他産業には例のない新しいルールを導入した点です。現場で働く人の賃金が適正に支払われる―その当たり前を、制度として担保する取り組みと言えます。もちろん、法改正はスタートに過ぎません。円滑な運用には、官民の発注者、元請、下請など、建設に関わるすべての立場の方々の理解と実践が欠かせません。国土交通省としても、新ルールを現場で有効に活用いただけるよう、ガイドラインを整備し、業界横断での周知・定着を丁寧に進めていきます。
加えて、新ルールの実効性を確保する取り組みも同時に強化します。「建設Gメン」が個々の請負契約を調査し、違反のおそれがある事案には取引改善を求める。こうした仕組みによって、現場の隅々にまで新ルールを根づかせていきます。さらに、働き方改革の観点からは、長時間労働を前提としない適正工期の徹底、ICTの活用による効率的・高生産な施工への転換を促します。新ルールの適切な運用と一体で進めることで、建設業を“新4K”―「給与がよく、休暇が取れ、希望が持てる」、そして「かっこいい」―産業へ。若者から選ばれ、持続的に発展していける産業像を、関係者の皆さまとともに実現していきたいと考えています。
谷脇:関係者が一丸となって商慣行を変えていこうという姿勢が大切になりますね。
楠田:はい。中央建設業審議会においても、実効性を確保するための取り組みについて徹底的に議論をしていただきました。「労務費に関する基準」に基づいて適切な労務費を支払う企業などを見える化し、きちんと評価する取り組みも重要だと考えています。





