特集

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2025年10月号 No 572

建設業バックオフィスDXを進めるには

領域ごとの主な課題

領域1:現場支援分野/領域0:現場管理分野
① 元請に合わせた現場管理システムへの対応

施工管理・調整・安全管理に関して、スケジュール管理、写真管理等をクラウドで行う現場管理システムを使用することが多くなっています。これについては、民間のプロバイダーが多く存在しあらゆるサービスを提供していますが、システム間の互換性がないため元請企業が使用する現場管理システムに合わせて複数のシステムを導入せざるをえない状況となっています。また、利用料の支払いや操作方法の習得、場合によっては専門の要員の確保など、とりわけ中小企業にとっては大きな負担となっています。

② 様式の不統一

取引にあたり多数の工事関係書類が発生しますが、多くは発注者ごとに様式が異なり、現場管理システムによる作成が難しい場合は、別途書類を作成する必要があります。国においては、工事関係書類の様式の統一化や簡素化も進められていますが、地方公共団体では様式が異なるケースも多い状況です。

③ 制度・手続きの複雑さ

工事関係書類提出のデジタル化のための制度や仕組みは整いつつあります。例えば、ASP工事情報共有システムの活用により、工事打合せ簿の作成(協議・承認・報告)などをネット上で行うことができ、移動時間の短縮をはじめとした業務の効率化を図ることができるようになっています。しかし、その活用は国、都道府県及び指定都市までにとどまっており、市町村での導入は1割程度にとどまっています。

現場では、関係機関―厚生労働省、国土交通省、警察署、地方公共団体等への届出・申請が必要で、その件数も膨大です。そのため、e-Govによるデジタル化は徐々に進められているものの、特に中小企業にとっては必要とされる届出の把握自体が容易ではなく、電子申請にまで至ることが困難です。さらに企業が保管している従業員データとの連携ができず、結局、情報を再入力する必要があり、紙による手続きよりも手間がかかるという指摘もあるようです。

領域2:企業間取引分野

上記現場管理同様、発注、契約、請求に関しても、クラウドサービスの使用が一般的となっています。基本的にシステム間の互換性はないため、元請企業の使用するシステムへの対応をせざるをえず、その負担は中小企業にとっては大きくなります。元請企業にとっても、下請企業が自社に対応したシステムに対応できない場合、業務負担は増えることになります。

また、中小企業はデジタル化への対応自体が遅れています。例えば、約4割が請求書の受け渡しを紙で行っており、こうした書類のやり取りのために事務所間の移動に1日3時間以上費やしている営業担当者が約3割いるという調査結果があります

入札に関しては、国・都道府県及び指定都市はほぼ全てがデジタル化されていますが、市町村については約半数程度にとどまっています。契約に関しては、国はほぼ全てがデジタル化されていますが、都道府県については約半分、市町村については1割未満にとどまっています。

※㈱インフォマートが2023年、建設業に従事する会社員に実施したアンケート

領域3:関係機関との調整・取引分野

厚生労働省への36協定や適用事業報告の届出、保険関係成立届出等は、e-Govの活用により多くはデジタル化されており、電子申請の状況等も上記「領域1」と同様です。また、国土交通省への許可申請、金融機関や保証会社との取引、建設業退職金共済機構に対する掛け金納付、本財団に対するCCUSの事業者登録などもデジタル対応は可能です。

一方、金融機関との関係については、約束手形に係る取引において、その利用廃止が来年(2026年)に迫っています。全産業を対象とした(一社)全国銀行協会の調査では、手形の振出側の2割・受取側の1割が、手形利用をやめたくないと回答しています。しかしながら、手形に代わる仕組みとして電子記録債権が導入されていることから、手形の機能を保持しつつ電子化による対応が可能となることからその普及は急務となっています。

領域4:内部管理分野

財務管理、労務管理、勤怠管理、給与管理、人事管理などの内部管理に関するシステムの導入は進んでいますが、建設企業の多くは、日報や日程管理をホワイトボード、書面、エクセル等で行っています。デジタル人材の育成と、取引先を含めたデータ連携の可能性も含め考慮しながらシステム導入を検討する必要があります。

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