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大阪・関西万博で探る“建設の近未来” 建設関係者が知っておきたい5テーマ・12施設
「返す」前提でも万博らしい華やかさ
2005年に開催された愛・地球博では「3R」(リデュース、リユース、リサイクル)が施設整備の大テーマに掲げられた。今回、声高には言われていないものの、やはり3Rは多くの施設で留意されており、特に「リユース」には進化が見られる。愛・地球博で「地味」に思えたリユース前提のパビリオンが、今回は万博らしい華やかなものとなっている。
鉄骨系のリユースで注目したいのは、日本ガス協会が出展する「ガスパビリオン おばけワンダーランド」。最大高さ約18mの複数の三角形で構成される造形と、銀色に光る膜素材が特徴だ。日建設計が基本設計、日建設計と奥村組の設計共同体が実施設計、奥村組が施工を担当した。
ここでは、パビリオンを支える構造材に、再利用が可能なリース品の鉄骨部材を使用している。通常は仮設工事の「山留め」などに使うものだ。大型建築の基礎工事などで、掘削時の一時的な土留めのために使用される規格品で、利用後はリース会社に返却される。
鉄骨の立つ角度が複雑なので、接合部に工夫がいる。もともと開いている穴も使うが、ガセットプレート(部材を取り付けるための「受け」のプレート)を溶接して接合する部分もある。通常の山留めでもそういう箇所が発生するので、少量であれば返却時に元の状態に戻して再利用できるとのことだ。
「ガスパビリオン おばけワンダーランド」。場所は大屋根リング北側のやや西寄り。施工は奥村組。外壁に放射冷却の機能を持つ膜材を使用したこともポイント
木質系のリユースで注目したいのは「日本館」だ。これも設計は日建設計だ。木造ではないが、顔となる部分でCLT(直交集成板)を大量に使っている。CLTの板を、全体では円を描くように斜めに並べたデザイン。直線の材料であえて曲線を描く、という狙いだ。
今回の日本館で使用するのは国産スギ材のCLTパネル280組、計560枚。体積でいうと約1600m3。そのうち約半分の約860m3は日本CLT協会が無償貸与したものだ。つまり、閉幕後に返さなくてはならない。それ以外のCLTもできるだけ再利用する予定だ。
そのため、CLTに傷をつけず、取り外しやすいディテールを追求した。外部に露出する部分については、構造を負担する3プライ(CLTの1段1段をプライと呼ぶ)を保護するために、1層分を「増し張り」して4プライとした。
日本館を設計する日建設計のメンバーは、東京2020オリンピック・パラリンピックの「選手村ビレッジプラザ」も設計した。そこでも木材の返却を経験しており(建設にあたり全国の地方自治体が木材を貸与)、今回はそのノウハウを生かした形だ。
「日本館」。場所は大屋根リングの東側。円環状の構成は「いのちのリレー」を表現したもの。本体部分のCLTパネルは耐力壁としても機能する。施工は清水建設