特集

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2025年6月号 No.569

大阪・関西万博で探る“建設の近未来” 建設関係者が知っておきたい5テーマ・12施設

超軽量のCFRPやCO2吸収素材を構造に

 

過去の万博の歴史を見ても、大空間建築、特にドーム状の建築は新技術のチャレンジの場であった。本万博では特定非営利活動法人ゼリ・ジャパンが出展する「BLUE OCEAN DOME(ブルーオーシャン・ドーム)」が構造面で最注目だ。設計したのは坂茂氏(坂茂建築設計)。同氏は2000年に開催されたハノーバー万博(ドイツ)の日本館も設計した。同館は「紙管」を構造体としたもので、“万博史に残る傑作”の1つだ。

今回のBLUE OCEAN DOMEは、3つのドームが一部でくっつく形で構成され、それぞれの構造材が異なる。技術面の目玉は一番大きいドームB(中央)。ここはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)が主構造だ。CFRPは鉄の5分の1の軽さでありながら同等の強度を持つ素材で、航空宇宙産業や自動車などで使われている。ここではCFRPの採用により、杭を打たずに建設し、廃棄物を出さずに撤去できるパビリオンとした。内部の見た目も新鮮で、「塩ビ管?」と思うような細い構造材だ。

両側の2つのドームも坂氏らしい。入口側のドームAの構造材は竹集成材。竹は3~5年で成長する持続可能な素材だが、そのままだと直射日光により割れやすい。集成材にすることで軽量かつ木材より強く、加工もしやすくなる。今後の注目素材だ。

出口側のドームCの構造材は紙管。前述の通り、坂氏は過去にも紙管構造を使っているが、今回は紙管のジョイントに木製の球形ジョイントを使って循環性を高めた。


「BLUE OCEAN DOME」。場所は大屋根リングの西側、「トイレ4」の隣。施工は大和ハウス工業。閉幕後はモルディブのリゾートホテルへの移築が決まっている

 

坂氏のドームに比べるとやや地味ではあるものの、鹿島建設が設計・施工した「サステナドーム(ジュニアSDGsキャンプ)」も頭に入れておきたい。小学生~高校生を対象に、環境に関する体験型プログラムや展示などを行う小さなドームだ。このドームはCO2を吸収する環境配慮型コンクリートと、短工期・低コストを実現する「KTドーム工法」を組み合わせて建設した。

一般的なコンクリートはセメントを水と反応させて硬化させる。鹿島建設らはCO2と反応して硬化する特殊材料をセメントの代替材料の一部に使用した「CO2-SUICOM」を2000年代に開発していた。通常は工場でプレキャストコンクリートに用いるが、今回は現場で使った。

ドーム型のポリ塩化ビニル膜(PVC)に空気を送り込んで膨らませて型枠とする。内側に配筋を行い、コンクリートを吹き付けて躯体を構築する。技術の組み合わせによりCO2排出量を計70%削減できる。東京にある技術研究所の隣接地で同規模の試験施工を行ったうえで、現地で施工した。


「サステナドーム」。場所は西ゲートの西側。大屋根リングからは少し歩く。設計・施工の鹿島建設はこのドームを「CUCO-SUICOMドーム」と呼んでいる

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