特集
建設会社の働き方改革の現状と人手不足対策
2024年4月に建設業でも始まった時間外労働の上限規制。しかし、これにより発生する諸問題――2024年問題への対策が進んでいない上、「人手不足倒産が起きているのに、4割前後の会社は何も対策していない」のが実態だ。建設会社、特に中小工事会社の働き方改革の現状と人手不足対策について「クラフトバンク総研」が独自調査した内容とその対策を解説する。
「中小工事会社の74%が2024年問題未対策」の現状
クラフトバンク総研(クラフトバンク株式会社が運営する民間研究所)は2024年8月に社員数5~100名の工事会社に対し、独自の調査を行った(総回答数1,488名、技能者を直接雇用する全国の工事会社に勤務する経営者、事務員、技能者が対象)。
2024年問題の対策については74%が未対応。2023年8月に実施した同様の調査では83%が未対応で、1年で9ポイントしか改善していない。2024年に入っても働き方改革が進んでいないことがわかる。回答者全体のうち、未だ2024年問題を「知らない」と回答しているのは24%、経営者ですら9%にのぼっている。
2024年問題においては、そもそも始業・終業の時間を管理する勤怠管理に課題を抱える会社が38%あった。勤怠管理方法については33%が「手書きの日報」と回答。また日程・工程管理方法については56%が「紙かホワイトボード」と回答しており、未だに非効率な「手書き管理」から脱却できていない。
「手書きの日報の束」から数字を拾って行う勤怠管理・給与計算には膨大な手間がかかる。結果として経営者の50%が毎日2時間以上の事務作業を行っており、工事会社の経営者は事務処理に追われ、営業や人材採用・育成といった業務に時間を割けない実態が明らかになっている。
2024年問題への対策と業績の関係については、経営者が2024年問題に取り組む会社の方が業績は拡大傾向にあった。また、2024年問題への対策と会社規模の関係については、従業員数の少ない会社ほど対策が進んでいないことがわかっている。
約7割が人手不足で仕事を断ることがあるのに、「何の対策もしていない・わからない」が最多
人手不足について聞いたところ、69%が「人手不足で仕事を断ることがある」と回答しており、人手不足が受注にも影響していることがわかる。帝国データバンクの調査では2024年に従業員の退職、採用難などを原因とする人手不足倒産の件数は大幅に増加し、その中で最も多い業種が建設業、そしてその多くは社員数10名未満の規模の会社だ。そのため、M&Aによって大手企業の傘下に入る建設会社も増えている。
「人手不足の課題として感じること」について聞いたところ、人材育成、離職に関する回答が新卒採用、中途採用に関する回答よりも多かった。「建設業は人が採れない」とよく言われるが、人手不足の課題は「育てられない」「辞めていく」問題の方が大きいことがわかる。
ところが、「人材育成・定着のための対策」(社内向け)について聞くと44%が「何の対策もしていない・わからない」と回答。賃金のアップに取り組む回答が多いものの、DX(デジタルトランスフォーメーション)や業務効率化に取り組む会社は少なかった。非効率な業務はそのままに、賃金を上げて人材を引き留めていることがわかる。
同様に「人材採用強化に向けた情報発信などの対策」(社外向け)について聞くと38%が「何の対策もしていない・わからない」と回答し、十分な情報を掲載したホームページ(HP)を持っている会社は28%に過ぎなかった。
人材育成や定着と人材採用強化についてはいずれも「人手不足倒産が起きているのに、4割前後の会社は何も対策していない」ことがわかる。