特集

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2025年3月号 No.566

「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」の一部施行について

≪兼任の各要件≫

以下の全てに合致する必要があります。

【請負金額】

1億円(建築一式工事の場合は2億円)未満(令)。なお、工事途中において請負代金の額が左記以上となった場合は、兼任ができなくなります(マ)。

【兼任現場数】

2工事現場以下(令)。なお、専任を要する工事1件と、専任を要しない工事1件を兼任することも可能ですが、両工事とも、兼任の要件を全て満たす必要があります(マ)。

【工事現場間の距離】

1日で巡回可能かつ移動時間が概ね2時間以内(規則)。なお、移動時間の判断は、通常の移動手段(自動車など)の利用を前提に、確実に実施できる手段により判断する必要があります(マ)。

【下請次数】

当該技術者を配置する建設業者が注文者となった下請契約から数えた下請次数が3まで(規則)。なお、工事途中において下請次数が3次を超えた場合は、当該技術者は兼任ができなくなるので注意が必要です(マ)。

【連絡員の配置】

監理技術者等との連絡その他必要な措置を講ずるための者の配置(一式工事の場合は、当該建設工事の種類に関する実務経験を1年以上有する者)が必要(規則)。なお、連絡員は各工事に置く必要がありますが、同一の連絡員が複数の工事の連絡員を兼任することは可能であり、また、1つの工事に複数の連絡員を置くことも可能です。連絡員に当該工事への専任や常駐は求めません。また請負会社との直接的・恒常的な雇用関係は必要ありませんが、連絡員は当該請負業者が配置するものであり、施工管理の最終的な責任は当該請負会社が負うことに注意が必要です(マ)。

【施工体制を確認する情報通信技術の措置】

監理技術者等が工事現場の施工体制を情報通信技術により確認できる措置を講じている必要(規則)。なお、当該技術については、現場作業員の入退場が遠隔から確認できるものとし、CCUS又はCCUSとAPI連携したシステムが望ましいですが、その他のシステムであっても上記目的に対応したシステムであれば活用可能です(マ)。

【人員の配置を示す計画書の作成、保存等】

当該建設業者の名称・所在地、監理技術者等の氏名、超過勤務時間の予定と実績、各建設工事の情報、情報通信技術等を記載した計画書を作成する必要(電磁的方法によることも可能)(規則)。なお、国土交通省HPにおいて、計画書の参考様式を公開していますのでご参照下さい。

【現場状況確認のための情報通信機器の設置】

監理技術者等が工事現場以外から工事現場の状況を確認するために必要な映像・音声の送受信が可能な情報通信機器を設置している必要(規則)。なお、必要な情報のやりとりを確実に実施できるものであればよいため、一般的なスマートフォンやタブレット端末等でも構いません(マ)。

ここまでは、工事現場の兼任について記載しましたが、改正建設業法では、営業所技術者等が専任を要する工事現場の監理技術者等を兼務できることとなったところ、兼務ができる要件は、工事現場の兼任と基本的に同内容です(兼任できる工事現場の数は1現場まで。)。

②ICTを活用した現場管理の効率化

ICTの進展や社会全体への普及を背景に、建設工事の施工管理等においてもウェアラブルカメラをはじめとする各種技術の活用が進んでいます。また、建設業における働き方改革の更なる推進にあたっては、生産性を向上させることが不可欠ですが、ICTの更なる活用は生産性向上の観点から重要です。

そこで建設業法・入契法改正法では、特定建設業者及び公共工事の受注者に対し、ICT活用による現場管理が努力義務化されるとともに、発注者から直接建設工事を請け負った場合においては、ICT活用による現場管理に係る下請負人の指導についても努力義務化されました。また、国土交通大臣は、当該措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るための指針となるべき事項を定め、これを公表することとされたところ、令和6年12月13日に当該指針を公表しました。同指針では、とりわけ、特定建設業者や、民間工事を牽引する公共工事の受注者を主な対象としていますが、担い手確保が喫緊の課題であるところ、全ての建設業者によるICT活用の積極的な取組が不可欠である旨認識しています。また、ICT活用には、建設業者だけでなく、発注者・工事監理者・設計者等の理解も重要であること、建設業者間での共同での新技術の開発・研究の促進による、さらなる技術開発の必要性など、建設業者がICT活用を進めていく上での、周辺環境の理解・整備の重要性に触れております。そのうえで、全ての建設業者で経営規模等に応じたICT化の取組を進めていただくために、バックオフィスと施工現場の2つに大別し、具体的な方法・留意点をお示ししております。

バックオフィスにおけるICT活用については、施工管理システムを活用した元請・下請間の書類等のやり取りの合理化や、CCUS・建退共電子申請方式の積極的な活用など、多くの建設業者に取り組んでいただきたい内容を紹介しております。また、施工現場におけるICT活用については、下請業者や建設業者間における連携・協働によるICT活用の推進や、ICT活用に係る技術者及び技能者の技能の向上など、建設業者がICTを活用するうえで留意すべき点をまとめているほか、幾つかの具体的なICT活用事例について紹介しています。ICT活用事例については、この指針のほかに、実際に建設業者が現場で活用した際の導入背景や活用時の工夫・ポイントを記載した詳細な事例集も公表しており、この指針や事例集等も参考に、建設業界がICT活用に一層取り組むことが強く期待されています。

3 おわりに

今回の改正は、建設業における担い手確保が急務になる中、処遇改善や資材高騰への対応、働き方改革や生産性向上の取組が喫緊の課題となっていることを踏まえて緊急に行うものであり、本年12月までの建設業法・入契法改正法の全面施行に向け制度の詳細検討を進めるとともに、受発注者を問わず、建設工事に関わる全ての方に改正内容をご理解いただけるよう周知徹底に努めてまいります。あわせて、「建設Gメン」の体制を強化することで、担い手確保のための取組における実効性を確保してまいります。

これらの制度改正による措置を通じ、業界の皆様の声を聴きながら建設業における処遇改善、働き方改革及び生産性向上に総合的に取り組むことで、新4Kといえる魅力的な産業を目指すとともに、インフラ整備の担い手・地域の守り手として持続可能な建設業を実現してまいります。

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