建設経済の動向

建設経済の動向
2022年3月 No.536

2022年度の建設界の注目ポイントは

大雨の頻発を引き起こす気候変動やICT(情報通信技術)活用といった大きなうねりが、建設産業の仕事を劇的に変えている。2022年度の建設産業における代表的な動向を、ここに整理する。22年度に建設の仕事を進めるうえで欠かせない情報なので、念のため確認しておいてほしい。

今回は、新年度の始まりが近いというタイミングを考慮して、2022年度の建設界において注目の動きを紹介したい。気候変動に伴う取り組みと、ICT活用をはじめとする建設DX(デジタルトランスフォーメーション)、大型プロジェクトの3つだ。

気候変動に伴う大きな動きとしては、国土強靱化の取り組みが進む。22年度は「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の2年目となり、流域治水やインフラの老朽化対策などへ重点的に投資される。流域治水とは、上流や支川なども含めた流域全体で様々な治水施設を設けて対応する取り組みだ。

建築の分野でも、建物の省エネ化を推進するために、建築基準法や建築物省エネ法を大幅に見直す案が提示されている。22年度内の法案提出を目指している状況だ。25年度以降に新築する全建築物で省エネ基準への適合を義務付けたり、省エネ化に伴って変わる建物の構造を踏まえて、いわゆる4号特例の対象を見直したりする見通しだ。

建設に関連して二酸化炭素の排出量が多くなる部分は、コンクリートの素材であるセメントの使用だ。政府が掲げた「2050年カーボンニュートラル」を目指して、コンクリートにおける脱炭素化の取り組みは22年度に大きく進んでいく可能性がある。例えば、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、二酸化炭素の排出量削減に寄与するコンクリート開発を推進する企業を公募。22年以降、技術開発などを後押ししていく。

自動化やドローン活用で動き 日本橋地下化の工事発注へ

建設DXの取り組みも加速する。国土交通省は22年度以降の技術政策を示す新たな技術基本計画を21年度末までに策定。近年の社会的課題を踏まえ、デジタル活用などによる建設分野での課題解決を狙う。

期待される技術の1つが無人化や自動化だ。土木研究所は重機の自動運転技術の開発を加速できるような環境整備を図るために、電子制御式重機の制御信号について統一規格の整備を提案。22年度にその推進に向けた会議体を立ち上げる。

ほかにも、大手建設会社16社が21年9月に設立した建設RXコンソーシアムによる建設ロボットの研究開発なども進む見通しだ。

22年度は大手建設会社だけでなく、中小規模の建設会社などが担う小規模現場におけるICT施工の拡大も進展する。国交省は現時点で十分に浸透していない中小規模の建設現場でのICT施工を普及させるための施工要領をまとめたり、ICT建機の普及を見据えた機械の認定制度の運用を始めたりする。

このほか22年12月ごろをめどに、有人地帯で補助者を付けないドローンの目視外飛行が解禁される見通しだ。都市部でのインフラ点検にドローンが利用される機会が一段と増える可能性がある。

大型のプロジェクトでは、首都高速都心環状線の日本橋付近の地下化事業がいよいよ着工に向かう。22年度後半に複数のトンネル工事が発注される見通しだ。関西では25年に開催される大阪・関西万博へのアクセス改善を狙い、淀川左岸線の整備を加速させる。

空港整備では、ポストコロナにおける需要回復を期待して、施設増強が進められている。成田国際空港では、B滑走路の延伸に向けた準備工事が22年度秋ごろに始まり、新たに設けるC滑走路については、23年度に準備工事に着手する方針だ。福岡空港でも、25年3月末の供用開始を目標とした2本目の滑走路の工事が進んでいる。

首都高速道路会社が日本橋工事事務所内に開設したPRルームにある日本橋区間の模型(写真:日経コンストラクション)

 

【冊子PDFはこちら

関連記事

しんこう-Webとは
バックナンバー
アンケート募集中
メールマガジン配信希望はこちら