建設経済の動向

建設経済の動向
2022年2月 No.535

技能者の処遇改善がいよいよ本格化

「仕事がきつい、給料が安い、職場が危険」。かつて、建設産業は3Kの職場の代表格と言われていた。しかし、建設産業での職場改善は進んでいる。週休2日を実現したり、建設業に従事する人の報酬を高めたりするための取り組みは、着実に広がってきた。

建設産業は、過去に3Kと呼ばれた時代があった。しかし、最近は建設産業における労務環境が改善する傾向にある。

例えば労働時間。建設産業はまだ労働時間が長い業種の1つとなっているものの、週休2日を導入する現場は着実に増えている。日本建設業連合会が会員企業向けに実施した調査では、2020年度に4週8閉所を達成した建設現場は、全体の3分の1にまで増加した。19年度は26.3%にとどまっていたので、この1年で比較的大きく改善した。特に土木工事では4週8閉所以上を実現する現場の割合が高く、40.3%にまで達していた。前年度から6.3ポイント改善した値だ。

2024年4月には、改正労働基準法に基づいて建設業にも時間外労働へ罰則付きの上限規制が適用される。時間外労働は原則として、月45時間以内かつ年間360時間以内となる。時間外労働の削減は、建設会社にとって喫緊の課題になっている。

国土交通省は、2023年度から全ての直轄工事について、発注者指定型の週休2日対象工事として公告する考えだ。

図  全体で3割、土木は4割で4週8閉所

日本建設業連合会が会員企業の現場を調査した結果に基づいて日経コンストラクションが作成。
2020年度は1万5922現場、19年度は1万7227現場を調べた

元請けが下請けに褒賞 重層下請けを撲滅する動きも

休日取得を促す取り組みは、民間の建設会社でも始まっている。五洋建設は現場で設定する休日数の目標以上に下請けの会社が休日を取得した場合に、労務費を割り増す制度を19年7月に始めた。

下請けの会社には現場事務所の閉所目標を踏まえて見積もりを出してもらい、その見積もりを超えた日数の休みを取得していれば労務費を割り増す。2020年度には土木と建築を合計して、178社が取り組んだという。このうち、26社に対して工事完了後に、約611万円が支払われた。

建設産業では重層下請けが、たびたび問題となる。下請けの次数が増え過ぎると、元請けの建設会社の管理が行き届かなくなるだけでなく、末端で働く作業員に十分な報酬が行き渡らなくなる。そうした職場には、若い世代も入りたいとは考えず、事業の継続性も危うくなる。

次世代の担い手をしっかり確保するために、下請けの次数を制限しようとする取り組みが進んでいる。

例えば鹿島は、2023年度までに原則として下請けは2次までとする方針を打ち出している。21年度は既に移行期間に位置付け、取り組みを始めた。

発注者側で取り組む事例もある。京都府や福井県、鳥取県など一部の自治体では、公共工事において下請けの次数を制限するルールを既に設けている。

図  発注者が下請け次数を制限

自治体 導入時期 下請け次数制限 ペナルティー
京都府 2012年 原則として建築一式工事は3次、それ以外は2次まで。制限次数を超える下請け契約を結ぶ場合は理由書を提出 理由書などを提出しない場合は指導する。従わない場合は指名停止などの措置を講じる
福井県 2014年 建築一式工事は3次、それ以外は2次まで(1000万円以下の土木一式工事は1次まで)。制限次数を超える下請け契約を結ぶ場合は制限除外申請が必要 制限次数を超える下請け契約が判明した場合、是正指導を行う。指導に従わない場合は指名停止などの措置を講じる
鳥取県 2015年 建築一式工事など建築・営繕系工事は3次まで、それ以外は2次まで。制限次数を超える下請け契約を結ぶ場合は監督員と協議のうえ認める 制限次数を超える下請け契約が判明した場合、是正指示を行う。指示に従わない場合は入札参加資格の停止を行うことも可能

 下請けの次数に制限を設けている自治体の例。国土交通省の資料を基に日経コンストラクションが作成

 

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